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2018年10月16日

フォーカス 私たちの実践 多職種と連携した退院支援 福岡・みさき病院 患者中心の医療・介護を提供できるチーム医療

 福岡・みさき病院の回復期リハビリテーション病棟では多職種で退院支援を行っています。しかし、患者、家族から得た情報が多職種間で共有されないことで、患者の安全が守られない事例へ発展。医療者同士の結集と信頼が育めるチーム医療をめざし、学習会や多職種カンファレンスなどを通し、他職種の理解と連携した退院支援につなげました。第一三回学術・運動交流集会での看護師・鹿田梨沙さんの報告です。

 福岡・みさき病院はセンター病院である米の山病院の後方支援病院として、リハビリテーション医療、認知症医療に力を入れています。回復期リハビリテーション病棟では多職種とともに退院支援を行っています。さらなる質の向上と医療者同士の結集、信頼できるチーム医療をめざし、退院支援に関する組織分析を行いました。
 現状を測るためSWOT分析を行うと、患者の七割が八五歳以上の高齢者で、基礎疾患や合併症を患っていることから、多職種が介入していました。各職種は患者、家族から独自に情報を入手でき、中には情報を得た職種のみで、ケアを提供する現状がありました。そのため、患者の安全性が守れない事例へと発展。定期的なカンファレンスはあるものの、タイムリーに情報を共有する場はありませんでした。
 そこで、回復期リハビリテーション病棟にかかわる八職種を対象に、四つの具体的行動を一年間行いました。

■チーム医療の発展へ

 一つめに、多職種の理解を得られるよう、多職種合同学習会を行いました。全職種が参加しやすいよう、学習会は月に一度、時間外の六〇分以内で行いました。
 まず、今後の学習会の動機づけに向けた講義を行いました。その後、各職種の専門性や視点について担当職種の責任者が講義を行います。全職種の学習会が終了すると、チーム医療の学習を行い、アンケートを実施しました。
 事前アンケートでは四八%しかほかの職種を理解できていませんでしたが、学習会後は八九%が理解できたと回答。九七%が他職種を尊重した関わりができるようになったという結果になりました。
 相手の価値観を認め、各職種が異なる文化を持っていることを理解した上で、話し合うことが可能になりました。このことは、医療安全の向上や他職種の尊重につながり、医療者同士の結集と信頼を育むチーム医療の発展に期待ができ、患者、家族へ質の高いケア提供が可能になりました。

■多視点から計画と基準を作成

 二つめは、効果的な多職種カンファレンスです。カンファレンス内容の質を向上させるため、今までのカンファレンスに「臨床倫理の4分割法」を活用しました()。各職種の専門性を発揮し、一つの症例を多くの視点から情報収集できました。また、課題分析や判断の偏りが少なくなり、内容の質が向上されました。
 三つめは、看護計画の立案と評価を行いました。カンファレンス内容を反映し、ケア実践と評価をしました。IADLの評価は多職種と行います。効果的なカンファレンスが実施されることで、その内容を反映した看護計画が立案され、計画に個別性がでてきました。また、看護計画立案率も増加。患者、家族に寄り添った看護の発展が可能になりました。
 四つめは、多職種共通の退院支援基準の作成です。具体的行動計画に沿って退院支援基準を多職種とともに作成。新入職員や異動時のオリエンテーションで活用しています。新基準でカンファレンスを実施するようになり、患者、家族に対して一貫した方向性のケア提供につながりました。患者、家族中心の医療の展開が可能になりました。

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 患者、家族と目的や情報を共有し、多職種が有機的に連携する仕組みづくりは、医療・生活の質の向上につながりました。その前提として、専門職種が互いに理解しようとする姿勢や尊重できる関係づくりが根底にあります。
 看護を基盤として、各職種が専門的視点に立ち患者の人権を尊重した医療・介護を提供していきたいです。

(民医連新聞 第1678号 2018年10月15日)

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