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2018年11月20日

これでばっちり ニュースな言葉 水道があぶない!

 大阪北部地震で老朽化した水道管が破断し、被害を及ぼしました。政府は「老朽化した水道管」問題から水道民営化を含む、水道法改正案を衆議院本会議で可決。参議院で継続審議になっています。その問題点について東京・八王子合同法律事務所の弁護士、尾林芳匡さんが解説します。

八王子合同法律事務所 弁護士
こたえる人 尾林 芳匡さん

■水は生活に不可欠

 水は、毎日の私たちの暮らしに必要不可欠です。飲料はもちろん、入浴や清掃洗濯など、健康で文化的な生活に欠かせないものとして、国と地方自治体の責任で供給されてきました。公衆衛生についての国の責任(憲法二五条二項)と水道法がその根拠となる法です。地方自治体には、その地域の自然的・社会的な条件に応じて、水道の計画を立てて実施する責任があり、国には水源開発など水道の基本的・総合的な施策を作って推進し、地方自治体や水道事業者に対して必要な技術的・財政的な援助を行う責任があります。

■企業のもうけの場に

 水道の運営を営利企業に任せることを推進し、また広域化をすすめる水道法改正案が国会に提出され、衆議院を通過しています。すでに保育園・学校給食・公共施設など多くの公共サービスが営利企業に委託されていますが、水道は依然として地方自治体が運営するところが大多数です。命に直結する水は、技術的な規制も多く、コスト削減も収益確保も困難だからです。
 今回の水道法改正案は、地方自治体が水道事業者として施設整備をしながら、運営で収益をあげる部分を民間事業者にゆだねることを可能にするものです。従来からあった「PFI法」による「コンセッション」(公共施設の整備運営を民間にゆだねる方式のうち施設の所有を公共部門に残し運営権のみ民間に持たせる方式)を、さらに使いやすくします。台風や地震などの災害で大規模修繕が必要になったときは地方自治体が費用を負担し、日常の管理運営は民間企業が収益の対象とするのです。
 また今回の改正案では、都道府県が計画を立てて広域化をすすめる内容も盛り込まれます。経費削減と民間企業の収益のために広域化して設備を統廃合しようとするものです。

■海外では再公営化も

 水道へのコンセッション方式の導入は、災害発生時における応急体制や他の自治体への応援体制の整備などが民間事業者に可能か、民間事業者による水道施設の更新事業や事業運営をモニタリングする人材や技術者をどう確保するのかなどの重大な問題があり、住民の福祉とはかけ離れた施策です。
 また、民間事業者は経費節減と収益拡大に努めるので、老朽管の更新や耐震化対策を推進する方策とはならず、料金値上げのおそれもあります。
 経済界は早くから水道の民間開放を要求し、麻生副総理が二〇一三年四月、米国のシンクタンクで「日本の水道はすべて民営化する」と発言するなど、政府は水道事業の民営化を推進しています。
 しかし、水道事業が民営化された海外では、フィリピン・マニラ市で水道料金が四~五倍に跳ね上がり、ボリビア・コチャバンバ市では雨水まで有料化されて暴動が起きています。フランス・パリ市では、料金高騰に加え不透明な経営実態が問題となっています。世界の多くの地方自治体で再公営化が相次いでいます。
 広域化も、地元の清浄な水源を犠牲にして遠方から導水するなど、不合理な計画の押し付けにつながるおそれがあります。

■反対の声をさらに

 大阪市、浜松市などで水道民営化反対の運動がおきています。埼玉県小鹿野町議会は広域化に伴う地元浄水場の廃止に反対する議会決議を採択しました。新潟県議会では水道法一部改正に反対する決議が採択されています。
 二〇一九年は統一地方選挙の年です。各地で命の水をまもる住民の運動を盛り上げ、地方自治体が責任をもって住民に安くてきれいな水を供給し続け、国が必要な支援を拡充するよう、さらに声を広げましょう。

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(民医連新聞 第1680号 2018年11月19日)

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