医療・看護

2018年12月4日

相談室日誌 連載455 妻を亡くしアルコール依存 支援のつながりで前向きに(青森)

 当クリニックでは、内科と精神科の外来診療と訪問診療を行っています。精神科外来から「中断中のAさん(六〇代後半・男性)に連絡をしたら、お金がなくて受診できないと言っている」と連絡がありました。看護師とSWで自宅を訪問すると生活状況が見えてきました。
 Aさんは、約一年前にアルコール性肝硬変で入院、入院中にせん妄状態となり精神科病院へ転院しました。施設入所もすすめられたようですが、本人の希望で自宅へ退院。退院後、アルコール依存症の治療のために、当院へ数回通院しましたが、お金がなく中断していました。年金は月約八万円、持ち家で単身生活でした。訪問した際、自宅に米はあるものの冷蔵庫には調味料しかなく、食事内容が偏っていることがわかりました。最近、自転車で転倒し、肩や足を負傷し、長時間歩くことができなくなっていました。訪問した日のうちに、自立支援医療の申請手続きに同行し、精神科通院の医療費軽減をめざしました。自宅が古く、階段で何度も転落していたため、住宅改修(てすり)を提案し介護保険も申請しました。通院手段として、組合員バスや公共交通機関の利用法も伝えました。
 その後、介護保険は要支援で決まり、住宅改修ができ、自立支援医療も上限額が二五〇〇円と決定しました。月一回の通院ができるようになり、精神科訪問看護も開始。介護サービスは利用していませんが、包括支援センターの職員が訪問、見守りをしています。金銭的な苦しさは変わりませんが、Aさんを取り巻く支援者が増えたことでAさん自身が前向きな発言をするようになり、飲酒もせずに生活できています。
 Aさんは、急性期病院に入院する一年ほど前に妻を亡くし、その頃から酒量が増えたそうです。子どもたちもいますが、お酒の問題もあり疎遠でした。自己責任という見方もあるかも知れませんが、それでもAさんの生活は続きます。ライフイベントで喪失を抱えることは誰にでも起こり得ます。Aさんが自力で生活を続けていくための支援を続けていきたいです。

(民医連新聞 第1681号 2018年12月3日)

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