声明・見解

2004年12月17日

【声明2004.12.17】我々は精神障害者の通院公費負担制度(精神保健福祉法32条)の現状維持を断固要求する

2004年12月17日
全日本民医連第11回理事会
同 医療部・精神医療委員会

我々は精神障害者の通院公費負担制度(精神保健福祉法32条)の現状維持を断固要求する

 2004年9月、厚労省・精神保健福祉対策本部は「精神医療保健福祉の改革ビジョン」を発表した。続いて10月、障害保健福祉部が「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」を提示した。
 前者は「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本施策の推進のために、国民の意識改革や精神保健福祉体系の再編と基盤強化、及び精神病床の機能分 化・地域生活支援体制の強化を推進するとして、今後10年間で7万人の入院患者の退院を促進することが方針化された。
 後者では身体・知的・精神の3障害の福祉法を一元化することや、個々のニーズに応じた自立支援、良質な精神医療の効率的な提供、ケアマネジメントの制度 化、費用の公平な負担と資源配分の確保、介護保険との関係整理などをあげている。
すでにこれらの施策ついては、「障害者福祉の充実よりも政府の財源逼迫からの障害者への負担の強要」という批判や懸念が、いくつかの団体より表明されてい るが、11月12日に出された「障害者福祉サービス法(仮称)のイメージ」ではこの懸念がさらに具体化された。
 このなかで、障害者福祉の応能負担から応益負担という転換自体きわめて問題であるが、これまで精神保健福祉法で定められていた通院医療費公費負担制度を このサービス法の中に位置づけ、「障害種別に関わりの無い共通のサービス」として更正医療や育成医療と同列の福祉支給とし、対象を住民税非課税世帯とする 「低所得者」と、ほとんどが入院に相当する「疾患が重度で継続な治療を要する者」とすること、「指定医療機関制度」を導入することが方針となっている。
 通院医療費公費負担制度が、精神に障害を持つ方にとって精神疾患と社会的ハンディキャップの二重の困難を持ちながら外来医療を継続する上で極めて大きな 役割を果たしてきたことは論を待たない。経済的な負担を軽減し、治療中断による病状悪化、さらに再入院や自殺などを防いできた制度である。これに大幅な利 用制限を加えることは、治療を受ける権利の侵害であると同時に、「障害と疾病の同居」という精神障害の特殊性を考慮しない国の考え方を露骨に表したもので ある。この制度が「精神通院公費」と名を変えても実質適応が大幅に制限されれば、通院中断さらに再入院を増加させ、国自身が掲げた「入院医療から地域生活 中心へ」という目標にも矛盾する結果を招くと同時に、医療費を引き上げることは必至である。
 私たち全日本民医連は、憲法25条に定められた国民の生存権を保障する制度確立をめざ、しそれを阻害する動きとたたかい続けてきた。小泉政権のもとで医 療・福祉制度は大幅に後退し、この権利が侵害され続けている。今回の通院医療費公費負担制度の改変・実質的な廃止は精神障害をもつ人の健康と生活を破壊す るものであり絶対に容認できない。この制度の現状維持を断固要求し、引き続き利用者や他団体とも共同し医療福祉制度改悪反対の先頭に立つものである。

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