声明・見解

2006年1月20日

【声明2006.01.20】安全・安心の医療を提供できるよう診療報酬のマイナス改定をやめ、国民の願い・医療機関の声を活かした診療報酬改定を求める

<診療報酬改定に関する見解>

 

安全・安心の医療を提供できるよう診療報酬のマイナス改定をやめ、国民の願い・医療機関の声を活かした診療報酬改定を求める

 2006年1月20日
全日本民主医療機関連合会
会長  肥田  泰

<6年連続マイナス改定の問題点>

 政府は昨年12月18日、2006年の診療報酬改定率をマイナス3.16%(本体部分-1.36%、薬価・材料部分-1.8%)とすることを決め、12 月の20606年度予算案にもり込みました。
 1月11日にはこの改定率に基づく診療報酬改定の骨子をまとめて中央社会保険医療協議会に提出しました。この中では、在院日数のさらなる短縮、慢性期入 院基本料の引き下げや診療所の初再診料の引き下げ、大病院の初診料の大幅引き下げ、リハビリの上限設定、特別食の引き下げ、適時適温給食の廃止など、医療 現場に大きな問題をもたらす内容が含まれています。

 診療報酬はこの間、2002年-2.7%、2004年-1.0%と4年間連続してマイナス改定でしたが、2006年には史上最大の-3.16%の改定としました。
 診療報酬は、公的医療保険で行われる診療に対して、医療保険から医療機関に支払われる費用を定めたものです。これは、医師や医療従事者の労働の対価であ ると共に、患者に対する医療内容や医療水準を定め、患者・国民がよい医療を受ける権利を財政的に保障するものです。
 6年連続の大幅なマイナス改定は、医療機関の医師や看護師などの人件費に影響を与え、働く意欲を下落させるだけでなく、人員削減なども引き起こします。 また、必要な医療機器などの更新も困難にして、患者の受ける医療の質や医療の安全にも大きな影響を与えるものです。

<財務省など引き下げ要求の問題点>

 政府による診療報酬マイナス改定の決定に先立ち、財務省や財政審・経済財政諮問会議からは、「経済の伸びや物価・賃金動向に応じて引き下げる方向」が強く要望されてきました。

 1981年を100とする物価の伸びは124%、賃金の伸びは90年代後半から毎年下がってきているものの136.4%です。しかし、診療報酬の伸びは 101.6%とほとんど変化していない状況です。
 物価や賃金動向をもとにした改定といいますが、1997年以降の診療報酬は、マイナス改定で推移しています。安全な医療を求める国民の願いに応えるため には、06年改定では日本医師会など医療団体の主張するような大幅な引き上げこそ必要なのです。

<国民の願う医療と診療報酬のあり方>

 今日、国民が求めるものは、安全・安心の医療を受けることです。医療事故などを改善し、質の高い医療を求めています。このためには、医療現場から悲鳴が 聞こえる「医師・看護師など医療スタッフ不足」を解消し、労働条件を改善することこそが求められます。欧米に比して、医師や看護師の配置は半分から7割程 度です。少ない職員体制の中で、国民のいのちと健康を守るために厳しい仕事をしています。
 こうした中での6年連続の診療報酬マイナス改定は、国民の願い、医療スタッフの求める方向と全く逆行するものです。

 医療機関の多くが赤字を抱えるなど厳しい経営状況の中、診療報酬マイナス改定は、一層の困難をもたらし、安全・安心の医療の確保にも困難をもたらします。
 現在、公的医療機関の7割以上が赤字を抱えています。この赤字解消には、自治体の一般財源からの繰り入れも行われます。これらは、診療報酬マイナス改定 でさらに自治体負担・住民サービスの低下をもたらします。また、民間病院では、マイナス分を人員削減だけでなく、差額ベッド代など患者負担に転嫁すること も想起させます。

<診療報酬改定に国民の声・医療機関の声をいかすこと>

 2006年改定では従来の改定と違い、国民からのパブリックコメントも聞くことになっています。国会での予算審議でもマイナス改定問題が審議されるとい われています。こうして今春に改定内容を決定することになっています。医療現場の要望や医療を受ける国民の声を正しく反映させること、国会でも徹底した審 議を行い、国民の願い・医療機関の声に応える診療報酬の改定を行うことを強く要望するものです。

以上

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