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2019年3月5日

自然エネルギーで未来に希望を 第8回 被ばく医療セミナー 原自連会長 吉原毅さん 記念講演

 2月9日、第8回被ばく医療セミナーが開催され、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(以下、原自連)会長で城南信用金庫顧問の吉原毅さんが記念講演を行いました。概要を紹介します。(長野典右記者)

■津波到達前に損傷

 「原発は安い、安全、二酸化炭素を出さないので環境にやさしい、無限のエネルギー」は東京電力福島第一原発事故で、うそであるとわかりました。国会の事故調査の報告では、津波や鉄塔の倒壊、ディーゼル発電機の故障による全電源喪失で炉心溶融が起きたのではなく、すでに津波が来る前に地震の揺れで重要機器が損傷した可能性が高いと指摘されました。国民にとって不都合な真実は隠(いん)蔽(ぺい)されたのです。原発の耐震性は高いものでなく、構造上、揺れに弱いのです。

■原爆168発に相当

 政府の推計によると、事故で放出されたセシウムは広島型原爆の168発に相当するとしていますが、計測が不十分なため、実際はそれ以上の放射能が出たと考えられます。放出された放射能の86%が偏西風で飛ばされ、太平洋に放出、14%は日本国土にもどり、飯舘村などはロシアのチェルノブイリ原発事故以上の放射能汚染になりました。警察官僚出身のある大臣経験者は福島の事故の惨状をみて、「消防や自衛隊が行っても収束できないのに、一電力会社の利益のために人のいのちを犠牲にすることはありえない」とまで語りました。

■富は電力会社に集中

 福島の事故の後、再生可能エネルギーとして、太陽光や風力などが世界に広がっています。福島の事故当時、全体の1割に過ぎなかった太陽光・風力エネルギーは、2・5倍に。2030年までにドイツは50%、フランスは40%、中国は2020年目標で発電量の35%とするとしています。しかし日本は22~24%にとどまっています。
 日本の水力発電は現在1割程度ですが、発電機をつけていないダムに発電機を設置し、水圧を高い状態にして発電すれば、2倍、3倍の発電量にすることは可能です。また、ソーラーシェアリングとして、農地でお米と野菜をつくりながら発電をすることもできます。つくった電力を売り、地域経済も発展し、活性化します。富が一電力会社に集中するのではなく、エネルギーや経済の民主化、貧困格差の改善、過密過疎の解消、均衡ある経済の発展につながっていきます。
 国際金融資本や大企業だけが富を独占するのではなく、人間性を回復し、みんなが潤う協同組合型経済にかえていくべきです

■原発建設で経営危機

 今年の年頭、経団連の中西宏明会長は、原発政策について「東日本の原発は再稼働していない。国民が反対するものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や設備納入業者が無理につくることは民主国家ではない」と指摘。しかし後日、「再稼働はどんどんやるべきだ」と述べました。この真意について原自連として経団連に懇談の申し入れを行います。
 原発はこれまで1基5000億円だったものが、福島の事故以降、安全対策のため1兆5000億円に膨れあがり、東芝が経営危機に陥りました。日本も再生可能エネルギー中心のエネルギー政策に転換すべき時です。

■エネルギー政策転換を

 原自連は、昨年1月10日、原発ゼロ・自然エネルギー基本法案を提案しました。
 運転中の原発を直ちに停止し、運転を停止中の原発は、今後一切稼働させない、また自然エネルギーを最大限かつ可及的速やかに導入し、その電力比率目標は、2030年までに50%以上、2050年までに100%とすると提案しています。

(民医連新聞 第1687号 2019年3月4日)

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