MIN-IRENトピックス

2019年3月7日

60cmの髪をバッサリ 
長野

文・武田力(編集部)/写真・酒井猛

 本誌2015年10月号の表紙に登場した北原和みさん(10歳)が初めて「ヘアドネーション」をすると聞き、長野県飯田市にうかがいました。

 笑顔で迎えてくれたのは、和みさんと弟の平等くん(7歳)、母親の真智子さん。真智子さんは長野県民医連の健和会特定在宅総合支援センターで介護支援専門員を務めています。
 ヘアドネーションとは、病気や事故で髪の毛を失った子どものために、医療用かつらの材料である髪を寄付する活動です。真智子さんがインターネットでヘアドネーションの取り組みを知って和みさんに伝えると、「やってみる!」とすぐに乗り気になりました。15年夏、ちょうど表紙を撮影した直後のことです。

31cm以上の長さが必要

 頭をすっぽりと覆うかつらの製作には、31cm以上の長さの髪が約30人分必要です。撮影当時、小学1年生だった和みさんの髪の長さは20cmほど。それ以来、31cmを確保できるよう一度も髪を切らずに伸ばし続けました。あれから3年半、小学4年生になった和みさんの髪は約60cmまで伸びました。
 「髪が長いと絡まるし、一緒に寝ている私の下敷きになって引っ張られると痛いし…。この子なりに苦労して伸ばしたんですよ」と真智子さん。
 髪をかつらの材料にするためには、髪の毛が乾燥した状態でいくつかの毛束にしてカットする必要があります。真智子さん行きつけの美容院「Hair&Room more」(飯田市)に趣旨を説明してお願いすると、手順を理解して快く引き受けてくれました。この日、美容師が和みさんの髪に定規をあてて束ねたあと、ゆっくりハサミを入れました。

「お姉ちゃんじゃないみたい!」

 髪を切り終えた和みさんを見て、平等くんがひとこと「お姉ちゃんじゃないみたい!」
 「軽くなってさっぱりした」と言う和みさんを真ん中にみんなで記念撮影。和みさんは切ったばかりの長い黒髪を手に、照れくさそうにはにかみました。
 「なんで髪を寄付したいと思ったのですか」という記者の質問には恥ずかしそうに言葉少なでしたが、「(ヘアドネーションをするために)また伸ばしたい!」とはっきりした口調で話してくれました。
 真智子さんは「娘が私の提案を受け入れて、実際に取り組んでくれたことがうれしい。私自身、人の役に立ちたくて社会福祉士、主任介護支援専門員になったので」と笑顔です。

両親の願いとともに

 美容師の篠田美智代さんは、「この歳でお母さんに言われたことを理解して、人のために貢献しようとしています。喜ぶ子もいるだろうし、すごいことです」と話しました。切った髪は医療用かつらを子どもたちに無償提供するNPO法人「JHD&C」(大阪市)に郵送されました。
 和みさんと平等くん姉弟の名前には、「平和な社会で生きていってほしい」という両親の願いが込められています。和みさんは将来「シェフになりたい」とのこと。理由を聞くと、「自由にいろいろなメニューを考えることができるから」。
 別れ際、最後まで手を振ってくれた姉弟の笑顔が印象的でした。

いつでも元気 2019.3 No.329

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