医療・看護

2019年5月7日

診察室から 困難事例に希望の道筋を

 地域の診療所で慢性疾患管理を行っていると、糖尿病は代表的な疾患です。当院ではQI活動にもとりくみ、毎月、HbA1c値不良者(8・5%以上)をリストにして、院内カンファレンスで、多職種で検討しています。しかし、リスト上位者は固定してきており、精神障害や知的障害を併存している人への対応に苦慮しています。
 重度知的障害と自閉症を持つAさん(39歳)は、前医と「治療方針が合わない」「待ち時間が長い」と転医してきて4年。通院は不定期で、次回予約を毎回とりません。高度の肥満状態で、母親は本人が欲しがるだけ食べ物を与えます。「与えないと機嫌が悪いから」と。HbA1cは11~12%で推移。内服薬増量にも断固抵抗。辛抱強くカロリーの高いものについて毎回母親に指導していますが、全く聞こうとしません。通院時は暴れないよう父親が送迎していますが、「こんな子なんだから待たせず診察してくれ」と要求ばかり。糖尿病の合併症について説明しても、「長生きしても困るんです。親と同じ頃に逝(い)ってくれないと」との返事。障害者支援センターに連絡すると、障害者サービスの利用は中断しており、どこも支援していないと判明しました。
 60代の親が重度障害者のさまざまな困難を抱え込んでいたことがわかり、それまでの「困った親」「ネグレクトかも」という思いが変化。SOSを出せない家族だと気づきました。これまで適切なサービスが提供されず、ますます事態が悪化していたと理解できました。今つながっている医療福祉サービスが当院だけなら、通院はさせている親の思いを受けとめよう、と考えました。親の亡き後の展望が持てないつらさに向き合うことなしに、血糖改善はあり得ません。本人の適切な食事や治療、福祉サービスを受ける権利を守ることもわれわれの仕事です。
 重度の障害者の親にとって、今の日本は長生きを喜べる社会ではない、という現実を直視しつつ、希望の道筋を示すアプローチを続けようと思います。

(東昌子、滋賀・膳所(ぜぜ)診療所)

(民医連新聞 第1691号 2019年5月6日)

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