MIN-IRENトピックス

2019年5月7日

相談室日誌 連載463 地域のささえ合いの力 つなげるのが私たちの役目(新潟)

 孤立死・孤独死が頻発する中で、私たちの社会は「無縁社会」と名付けられました。親族がいるがかかわりを拒否されている、地域でも孤立している人の支援が増えていると実感しています。高齢者の生活をささえるために、私たちはどこまでかかわり、どのように支援の輪を広げていくか、日々模索しています。
 Aさんは70代の独居の女性。集合住宅に住んでいます。管理人からの相談でかかわりを開始。独語があり、夜中にベランダで大声を出します。住民から、「気味が悪い」「早く出て行ってほしい」と苦情が上がっていました。
 Aさん自身を知るため、突撃訪問から開始。統合失調症の診断で、精神科病院の入退院を25回くりかえしていました。精神科の受診も中断し、病識はありません。過去にもトラブルが原因で転居をくりかえし、そのたびに弟が対応してきました。しかし、すでに弟もかかわりを拒否。また住民もAさんとかかわらず、自分たちのコミュニティーから排除すべき存在として、Aさんと距離を置いていました。
 かかわり始めてから4カ月で訪問回数は30回を超えました。管理人や住民、行政、警察などで何回も集まり、「Aさんをどうささえるか」を考えましたが、うまく支援に結びつきません。その間もAさんの精神状態は悪化、体調管理も難しくなっていました。同時に住民も「心配」「何とかしないと」と変化していきました。
 一部の住民が毎日Aさん宅に行き、安否確認をしたり、食料を届けたり、いつの間にかAさんをささえる支援体制が構築されていました。最終的には救急車で総合病院に搬送され、その後は精神科病院へ転院となりました。救急搬送の時も、住民が病院まで同行してくれました。
 Aさんの支援を通して、私たち専門職だけでの支援の限界と、地域でのささえ合いの力や強みをあらためて感じました。人や地域との結びつきが希薄な社会だからこそ、支援の輪をどう広げ、つなげていくか、私たちの重要な役割だと思っています。

(民医連新聞 第1691号 2019年5月6日)

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