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2019年6月4日

フォーカス 私たちの実践 特養入居者の口腔ケア 沖縄・特別養護老人ホーム ゆがふ苑 訪問歯科の協力で口腔ケア 肺炎での入院減り、重症化を予防

 高齢者の肺炎疾患の増加にともない、沖縄・特別養護老人ホームゆがふ苑でも肺炎により入院するケースが増加傾向にありました。肺炎予防として、民医連外の訪問歯科と連携し、口腔ケアにとりくんでいます。第14回看護介護活動研究交流集会で介護福祉士・玉城善孝さん、川上将吾さんが報告しました。

 当施設は2016年4月に開所した、特別養護老人ホームです。ユニット型の特養が70床、短期入所生活介護が15床の計85床あります。入居条件は要介護3以上で、ほとんどが65歳以上です。
 日本の疾患別死因として肺炎は上昇傾向が続き、2011年には脳血管疾患を抜いて死因の第3位になっています。その後も増加を続け、2015年には全死亡者の9・4%が肺炎患者で、約7割が75歳以上の高齢者です。
 そこで、肺炎予防策として口腔ケアを取り上げ、とりくみを始めました。その中で、専門職による指導や専門医の介入が必要になり、2016年10月から訪問歯科診療を開始しました。

■肺炎での入院が半数に

 月2回の訪問歯科診療と、月1回の歯科衛生士による口腔ケアを開始。沖縄民医連には訪問歯科診療をしている事業所がないため、民医連外の歯科診療所に依頼しました。職員は歯科診療や歯科衛生士による口腔ケアに立ち会い、いっしょにケアについて学びます。
 訪問歯科診療の介入前(16年4~9月)と介入後(17年4~9月)を比較すると、肺炎での入院者は、介入前の計10人に対し、介入後は計5人。5人の減少がみられました。
 入院期間についても、介入前は1週間以内での退院者はおらず、2~3週間の入院を必要とする人が半数を超えていました。しかし介入後は、1週間以内の退院が2割、2週間以内が8割で、3週間以上の入院を必要とする人はいませんでした。
 9月に行われる歯科健診の結果を見ると、歯周病、嚥下障害疑い、口腔内の汚れは減少していましたが、舌苔や歯垢、歯石は介入前後で大きな差はみられませんでした。口腔内乾燥については、中重度者は減り、軽度者が増えていました。
 訪問歯科診療の介入から6カ月という短い期間の調査にもかかわらず、肺炎による入院者数、入院期間ともに減少しました。これは、口腔ケアのとりくみを強化することで、肺炎罹患者の減少と重症化の予防ができたという結果につながったと考えます。

■セミナーで職員の意識向上

 しかし、自身で歯磨きができる人には職員が介入していないユニットもあり、口腔ケアに対する意識の不十分さと、職員の体制上、入居者1人にかける口腔ケアの時間が限られ、仕上げ磨きができない状況がありました。このことも踏まえて3つの課題が浮き彫りになりました。①口腔ケアについての手技技術および知識を深め職員全体の意識向上、②多職種による食事環境を整える支援の検討(ミールラウンド)、③歯科医療機関との連携の強化、です。
 そこで2016年11月から、多職種で構成する経口摂取チームによるミールラウンド(経口摂取支援)のとりくみを始めました。
 また年2回、口腔ケアセミナーを実施しています。歯科衛生士が実際に職員へ口腔ケアを行い、気になる点はその場で衛生士に質問しています。セミナーを通して、職員の口腔ケアに対する意識が向上してきました。以前は口腔ケアの担当職員を配置して、1日3回の口腔ケアを指導していましたが、いまでは担当を配置しなくても口腔ケアが根づき、習慣となっています
 口腔ケアのとりくみは、入居者が最後まで自分らしく生活する手助けのひとつであると考えています。特養における口腔ケアは、訪問歯科が行う専門的なケアだけでは不十分で、日常的に入居者をケアする介護スタッフのサポートが必要です。今後も口腔内の衛生を維持し、肺炎や口腔内トラブルを防ぎ、自分の口でおいしく食事を食べるという楽しみを提供していきたいです。

(民医連新聞 第1693号 2019年6月3日)

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