いつでも元気

2019年6月7日

けんこう教室 
食物アレルギー

石川・城北病院小児科 武石 大輔

石川・城北病院小児科
武石 大輔

 食べ物が原因で人の体に起こる症状のうち、免疫が関係しているものを「食物アレルギー」と呼びます。
 免疫は本来、細菌やウイルスなど危険な物質が体内に入ってきた時に、それを排除しようとする働きです。この免疫機能が未熟だったりバランスが崩れたりすると、体に入ってきた物質に対して過剰に反応して攻撃を仕掛けてしまいます。通常、食べ物は栄養として消化・吸収されるのですが、これを異物として認識するために、さまざまな症状を引き起こすのです。

タイプとアレルゲン

 食物アレルギーとひとことで言っても、のようにいくつかのタイプに分かれます。一般的に食物アレルギーと認識されているのは、アレルギーの原因となる食べ物(アレルゲン)を食べて2時間くらいの間に症状が出る「即時型症状」です。
 症状としては、皮膚が蚊に刺された時のように赤く腫れ、とても痒くなるじんましんが多く見られます。呼吸器の症状として咳や喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)が聞かれたり、消化器の症状として嘔吐、腹痛、下痢などが見られることもあります。粘膜が腫れたり炎症を起こすこともあります。
 皮膚と呼吸器など2つ以上の器官にわたって重篤な症状(全身のじんましん、顔色が悪くなるほどの呼吸苦等)となる時、これを「アナフィラキシー」と呼びます。
 さらに血圧が下がり、ボーっとしたり呼びかけに反応しない状態を「アナフィラキシーショック」と呼び、これは生命に関わる危険な状態です。
 図1のように鶏卵、牛乳、小麦で食物アレルギーの原因の7割を占めますが、そのほかピーナツ、果物類、魚卵などさまざまな食べ物で症状が起きる可能性があります。日本では幼児の10人に1人が食物アレルギーを持っていると言われますが、子どもは成長とともに免疫機能や消化管機能が発達するため、症状が出なくなることがほとんどです。

どうしてなるの?

 アレルギーの原因となるアレルゲンが体内に入ると、異物として排除しようとする免疫機能が働き、「IgE抗体」が作られます。これは感作と呼ばれます。
 IgE抗体は目、鼻、腸、気管支などの粘膜や皮膚にある「マスト細胞」の表面に、アンテナのように張り巡らされます。そのあと再びアレルゲンが侵入してくるとIgE抗体がこれを捕らえ、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が一気に放出されて、じんましんや炎症などさまざまなアレルギー症状を引き起こします。
 はじめの感作がどのように起こるのかについては諸説あります。アレルゲンが妊娠中の母からへその緒を通って赤ちゃんに運ばれるという説や、赤ちゃんが離乳食で食べたもので感作が起こるという説が従来は有力でした。近年は乾燥や湿疹、すり傷などでできた皮膚の隙間からアレルゲンが侵入して感作が起こるという「経皮感作」が有力な説になっています。
 乳児湿疹などはよく見られる症状ですが、湿疹は皮膚のバリアが壊れた状態であり、そこから直接体の中にいろいろな物質が入ってしまいます。埃やカビ、細菌だけでなく食べ物もそこから侵入して感作が起こり、食物アレルギーの原因となる可能性があります。湿疹なども油断せずに治療して、きれいな肌を保つことが重要です。

検査

 食物アレルギーの検査といえば、血液検査が思い浮かぶかもしれません。血液を検査すると、それぞれのアレルゲンに対するIgE抗体があるかどうかを測定することができます。0~6のスコアが高いほど、強いアレルギー反応が起きる可能性が高いことを示しています。
 しかし、血液検査はあくまで血液の中での反応を見ているのにすぎません。皮膚や呼吸器、消化器の症状として現れるかどうかは、各自の体質や体調などに左右されます。最終的な食物アレルギーの診断は、食べて症状が出るかどうか(食物負荷試験)で判断するしかありません。医師の指導のもと安全を確保しながら、食べ物を少しずつ摂取して反応を確認します。

治療

 食物アレルギーを根本的に治す薬はありません。アレルゲンとなる食べ物の摂取を中止(除去)するのが基本です。
 箱や袋、缶や瓶で包装された加工食品については、食品表示法に基づくアレルギー物質の表示が義務づけられています。表示義務のある特定原材料7品目のほか、表示が推奨される20品目が規定されています(図2)。
 1歳の時点で食物アレルギーと診断されても、摂取を中止していれば5割の子どもが3歳までには自然と食べられるようになり、8~9割の子どもが小学校に上がるまでには食べられるようになります。
 従来は、アレルゲンとなる食べ物の摂取を中止しつつ、定期的に血液検査をしてIgE抗体の数値が下がってきたら食べさせるという治療法が行われてきました。しかし、成長過程の子どもの栄養摂取制限は好ましいとは言えません。最近は代替食品で栄養を補いながら、アレルゲンであっても可能な範囲で摂取させる「必要最小限の除去」という考え方が主流になっています。
 また、近年はむしろ少しずつ摂取量を上げて、体を慣れさせていくほうが根治のためには有効との考え方も出てきています(経口免疫療法)。食物負荷試験で症状が出る限界の量を知り、毎日あるいは定期的に安全な量から少しずつ増やして食べさせていきます。治療の性質上、途中でアレルギー症状が出る可能性が少なからずあるため、必ず食物アレルギーの診療に慣れている専門の医療機関で行います。
 食物アレルギーの診療はここ数年で大きく変わりました。どのような形であれ、子どもたちが、安心して安全な食生活を送れるように心から願っています。

いつでも元気 2019.6 No.332

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