民医連新聞

2003年5月19日

安心・安全の医療を求めて(8)

山形・協立リハビリテーション病院

転倒・転落による骨折防止にヒッププロテクターを導入

 転倒・転落による骨折は完全に予防することが難しい事故の一つ。山形・協立リハビリテーション病院(医療療養二病棟と回復期リハビリテーション一病棟・一五六床)では、ヒッププロテクターを導入、骨折予防にとりくんでいます。

 ヒッププロテクター(以下HPと略します)は、外力から大腿骨頸部を保護する骨折予防パンツ型装具です。衝撃吸収材が使われています。九七年、老年症候 群の一つ、転倒を研究していた山形大医学部の安村誠司助教授(現・福島医大教授)から紹介されたものです。
 しかし当時は「排泄時の着脱が面倒」という理由で、敬遠され、入院中にHPを使いつづけた人はたった一割と低いものでした。当然、HPの有用性も認識されず、病院の片隅に放置されました。
 ところが〇一年六月・当院新築移転後の四カ月間で転倒による大腿骨頸部骨折が六件も発生(九〇年から〇一年五月までは、年間転倒は約四〇〇件、大腿頸部 骨折が一件という頻度でした)。HPの装着に本腰を入れてとりくむことになりました。骨折多発の原因は施設環境が変わったことだと考えられましたが、職員 一同、環境整備と予測的対応というそれまでの転倒防止策の限界を痛感、整形外科医のすすめもありました。

*   *

 転倒による骨折は、せん妄による痴呆患者、脳卒中後遺症が修飾を受けた患者で、病棟内での歩行が自立した退院間際の人に発生。前者には、入院時にリハビ リバーや離床センサーなどのベッド環境整備を行い、HP装着をすすめました。また、後者の患者には、片マヒの方が多いので、歩行自立前に作業療法士がHP の着脱を指導します。
 実践してみると、定着が難しいだろうと思っていたHPは予想以上に活用されるようになりました。患者が抱いている転倒への恐怖は、痴呆の方を含め、それ ほど大きかったのです。骨折患者の六割が入院中に使用を続け、うち四割が退院後も使っています。脳卒中後遺症の装着対象者では四割が常時着用。
 しかし、HPをつけていなかった時や、装着部位がずれて、装具の適合不全による骨折もあります。骨折・頭部外傷などの事故を身体抑制によらず、予防する ためには、HPそのものの改良、装着の簡素化、さらには床材を衝撃吸収性のあるものにすることが必要だと考えています。(茂木紹良・協立リハビリテーショ ン病院長)

(民医連新聞 第1308号 2003年5月19日)

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