民医連新聞

2003年5月19日

軍事大国・生活小国にっぽん ―有事法制が追い打ち―

レポート 多額の軍事費が国民生活を圧迫

 有事関連法案は、日本を戦争する国にし、米国の先制攻撃に日本の国民がまるごと強制動員させられる態勢を つくり、土地や施設を取り上げ、国民の自由や権利までも制限するものです。日本はすでに国民生活を削ってアメリカの軍事行動をささえています。「防衛費」 を例にとって調べてみました。

鐙 史朗記者

 なんと、イラク戦争に参加した米空母キティーホークに日本の海上自衛隊が燃料を提供していました。六日、横須賀港でパーカー艦長が記者会見で明らかにし ました。これは、テロ特措法にも憲法にも反する行為です。

アメリカの駆逐艦に170回の無料給油
 海上自衛隊は、二〇〇一年一二月二日以降、二〇〇三年三月二三日までに艦船用燃料の給油を、米軍の補給艦に一七〇回、英軍の補給艦に一一回、仏軍の駆逐 艦、ニュージーランド軍のフリゲード艦、イタリア軍の駆逐艦にそれぞれ一回の合計一八四回、約二八万六〇〇〇キロリットルを給油しました(防衛庁ホーム ページ)。
 これらの費用はすべて日本が負担し、すべて私たち国民の税金からまかなわれているのです。
 二〇〇一年度予算では予備費約一七三億円を閣議決定して使用。二〇〇二年度は予備費合計約一四七億円をあてた上、約一九億円を追加し、合計約一六六億円となっています(図1)。
 現在も「協力支援活動」を実施中であり、二〇〇二年一二月末までの概算額で約一九一億円が執行済みです。内訳は次のようになっています(図2)。

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私たちの税金がイラク戦争に
 テロ対策特措法は、二〇〇一年一一月二日に施行されました。これにより、戦後初めて海外に自衛隊を派遣し、「補給」「輸送」「修理・整備」「医療」「通 信」などアメリカへの後方支援活動を許しました。他にも、海上自衛隊の艦艇や航空自衛隊の航空機が物品の輸送をしています。さらに、防衛庁は協力支援活動 を「アルカイダ、タリバンの残党が逃亡を図り、テロを起こす危険性がある」との理由で、今年五月一九日まで六カ月延長しました。
 憲法違反の「テロ特措法」でさえ、国連の要請による活動に限り認め、米英が単独で行ったイラク戦争で「給油」することは認めていません。どさくさまぎれの違反や“拡大解釈”は許されません。
 「有事法」の先にある危険性を示すようなできごとです。

国民には冷たく米には手厚い支援
 アメリカ軍基地への支援費などの思いやり予算にも莫大な金額が使われています。
 防衛庁の資料では、負担が開始された一九七九年から、二〇〇一年までの分で計一万一九三〇件、総額一兆六〇五〇億円にのぼる税金が投入されました。
 内容には、公営住宅の二・七倍にもなる広さの高層住宅も。司令官にいたっては、三つの浴室、四つの寝室、食堂が一九畳、居間が三三畳分もある豪邸です。 さらに劇場や映画館、ボウリング場まで。日本では「三〇人学級」も実現していないのに、基地の中は米国の基準で一八~二五人学級です。
 また、思いやり予算の四割が米軍の海外での軍事行動を直接支える作戦支援関連施設の建設。これほど手厚い支援をしている国はどこにもありません。

世界第3位の日本の軍事費
 防衛庁が出す今年度の「防衛力整備と予算のポイント」(案)では、総額約五兆円の予算。戦車や護衛艦、戦闘機などに多額の費用が費やされます()。
 さらに、中期防衛力整備計画では、二〇〇五年度までにさらに軍備を増強する予定です(図3)。
 これらの兵器のほとんどが、アメリカの軍事産業から購入されています。

(表) 兵器の値段は…?
主要装備品  2002年度  2003年度
数量 金額 数量 金額
陸上防衛力 90式戦車
18両
143
17両
136
軽装甲機動車
149両
49
150両
48
96式装輪装甲車
15両
18
31両
39
99式自走155mmりゅう弾砲
7両
66
8両
78
多連装ロケットシステムMLRS
3両
64
3両
58
戦闘ヘリコプター(AH-64D)
2機
120
2機
148
新中距離地対空誘導弾
0.5(-)個群
207
海上防衛力 護衛艦(DDG)
1隻
1,475
1隻
1,365
潜水艦(SS)
1隻
458
1隻
454
掃海艇(MSC)
1隻
132
1隻
132
哨戒ヘリコプター(SH-60K)
7機
422
7機
486
新掃海・輸送ヘリコプター
1機
54
航空防衛力 支援戦闘機(F-2)
8機
962
6機
715
輸送ヘリコプター(CH-47J)
2機
72
4機
141
ボーイング767空中給油・輸送機
1機
241
1機
247
E-2Cの改善
0.5機
34
2.5機
76
ペトリオットの改善
2個群
204
2個群他
206
軽装甲機動車
4両
2
(2002年度防衛力整備と予算のポイント・案[防衛庁]より)
護衛艦を買うのになんと隻1,365億円:これを買うのをやめれば、サラリーマン3割負担にしなくてもすみます。

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くらし、福祉に予算を向ければ
 日本政府は、財政危機を理由に三兆円もの国民負担増を押しつける一方で、アメリカのためにはお金を使う政策をとっているのです。私たち国民の生活が圧迫されるのは明白です。
 今年四月からサラリーマンの自己負担が三割に改悪されましたが、四〇〇億円あれば二割負担のままでいけるのです。また、約三〇〇〇億円で、国保に対する 国庫負担がもとの四五%に戻せ、国保料の減額が可能になります。これは自衛隊が新たな軍備増強を一年間やめればおつりがきます。
 アメリカへの「後方支援活動」や思いやり予算、軍事力整備に税金を使うよりも国民の福祉、くらしに使うことが平和の道でもあります。
 税金の使い方への転換が、いまこそ求められています。

(民医連新聞 第1308号 2003年5月19日)

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