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2019年6月18日

明るく!楽しく! 医学部奨学生500人超える!

 全日本民医連の医学部奨学生が500人を超えました。そのとりくみと意義は―。全日本民医連医学生委員長の後藤慶太郎さんの寄稿です。また、奨学生の学習会をていねいに継続している栃木民医連の経験を聞きました。

目標にこだわり学生の思いとともに歩んで

全日本民医連医学生委員長 後藤慶太郎さん

 今年5月の集計で全日本民医連の医学部奨学生が500人となりました。民医連の医師後継者対策として、歴史的到達となりました。民医連の医療活動や民医連綱領に共感する医師をひとりでも多く養成し、民医連の事業所に迎え入れるためには、医学生対策に関する活動(通称‥医学対)はとても重要なとりくみです。

■ともに実践する奨学生集団を

 民医連の事業所で活躍する現役の医師集団は、年々高年齢化がすすんでいます。一方で次代を担う30代、40代の一番脂がのった年齢層の医師が定着しない、民医連を離れてしまう、という現象が起きています。未来に向かって、民医連という医療機関の医師集団を継続し、発展させていくためには、学生時代から民医連の医療活動に触れ、民医連綱領に共感を寄せ、主体的に民医連の医師研修や医療活動をともに実践する医学部奨学生集団を大きくしていくことが、重要になってきています。
 そこで具体的に掲げられた目標が500人という目標でした。この方針は、第41回定期総会(2014年2月、長野)で提起されました。15年の「大運動」、16年、17年の「医学対Movement」を経て、およそ5年の年月で実際に500人を達成した意義は大きなものがあります。今後の医学対の教訓にもなるもので、その意義を3点ほど述べたいと思います。

■目標やり切り、課題に挑戦

 1つは、当然のことですが、500人という掲げた目標を目標で済まさず、確実にやり切ったということです。1年ごと、学年ごと、地協や県連、事業所ごとに緻密に目標をシミュレーションして、活動し、成果を上げてきました。
 奨学生が増えるかどうかは、その時々の学生を取り巻く情勢や経済事情など不確定な要因に左右されるため、こちらが奨学生を増やしたいからと言って、順調に増やせるものではありません。
 数年間、奨学生がまったく増えなかったある事業所で、3年連続して奨学生が誕生するなど、年度ごとや事業所ごとで成果の凸凹や紆余曲折があるのは当然です。全国の民医連が一丸となって、グラフに示すように年を追うごとに着実に奨学生を増やしていったということです。このことは、今後の医学対にとって大きな自信になっていくと思います。
 2つ目は、単に奨学生を増やすだけでなく、とりくみを通じて、さまざまな課題に挑戦したり、克服したりしたことです。奨学生育成指針という、一人ひとりの奨学生について具体的な目標を設定し、その目標にそって活動や学習の援助をするとりくみが広がりました。奨学生になったらそれで終わりでなく、そこからが学びや成長の始まりです。増やすことと育てることを車の両輪として、重点を置いてとりくんできました。
 「医療・介護の2つの柱」で提起されたように、医学対活動とSDH(健康の社会的決定要因)を有機的に結合させ、こども食堂や無料塾のとりくみの中から奨学生が誕生しました。近年にはない新しい形の奨学生との出会いと実践が積み重ねられています。

■奨学生の活動に寄り添い

 3つ目は、この間の医学部不正入試問題に代表される、「医学部ハラスメント」ともいうべき問題に対して、心ある医学生や医学連(全日本医学生自治会連合)の学生が、問題を告発し、不正をただしていることです。不正に怒りを覚え、とりくみに共感した民医連の奨学生も多く運動に参加しています。実際に、医学部の合格率の男女比が本来的な差にまで縮まるなど、成果を上げています。医学対活動が奨学生の活動に寄り添い、応援できたということではないでしょうか。

* * *

 最後に、500人の奨学生を迎えるために、4人の「500メン・ウーメン」が一肌脱いでくれました。残念ながら正体は明かせませんが、全員が現場の第一線で活躍する医師であり、医学生委員です。今後も、明るく楽しい医学対活動に変身・前進を続けていきたいと思います。


週1学習会で関係も学習も深まる奨学生集団に

栃木民医連

 栃木民医連では2年前から毎週の奨学生学習会を開いています。学習会を通した医学部奨学生の成長の様子を聞きました。(丸山聡子記者)

 「今まで職員対学生の関係だったのが、最近は学生同士で話したり、学んだりしている。その様子を見るのが本当にうれしいんですよ」。栃木民医連の医学生担当、工藤鉄明さんは声を弾ませます。
 毎週火曜か水曜、それぞれが参加しやすい日に医学部奨学生が集まります。集まるのは5人前後。工藤さんの手料理を食べながらの3時間はあっという間です。
 最初に必ずやるのが“3分間スピーチ”。近況報告や悩み、趣味の話など、話したいことを話せばOK。1人3分のはずが長引き、5人で1時間以上ということも。学習もしっかり。最近は、地元・栃木で起こった日本最初の公害とも言われる足尾銅山鉱毒事件について、フィールドワークも行いました。SDHについても新入生を交えてイチから学んでいます。

■成長した3年生が引っ張る

 奨学生の学習会を毎週開くようになったのは2年前。それまでは月1回でした。「学習もなかなかすすまないし、学生同士もどこかよそよそしくて。どうにかしたいと考えていました」と工藤さん。
 きっかけは、全日本民医連が2017年に開いた医学対担当者新人スクール。青森民医連の医学対と医師(当初は学生)が数年間にわたって関係を築き、成長した過程を聞きました。どのくらいの頻度で会っていたのか聞くと、「週2~3回」との答えでした。
 県連に持ち帰り、18年度から週1の学習会をスタート。当時、1年生だった奨学生は3年生になり、学習会を引っ張ります。
 今年度、新1年生の奨学生を1人迎えました。地元の大学での入試宣伝で対話した学生です。診療所での実習や訪問診療への同行を経て、民医連綱領について話しました。「綱領の『私たち民医連は、無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす組織です』を紹介し、『今の日本はどうだろう?』と問いかけました。そのために、制度を良くしていく運動にも全国の仲間ととりくんでいる、と話しています」と工藤さん。学生は「患者一人ひとりのいのちを大切にし、ともに歩んでいくパートナーのような関係を築きたい」と決意を語りました。
 新入生を迎えた学習会。2年前には政治のことをほとんど知らなかった3年生が、「“知らぬが仏”は良くない。社会で起きていることを知ろう。微力でも無力ではない」と新入生に語りました。

■年間300人の医療体験

 工藤さんが入職した8年前は、医師、看護師、薬剤師などの高校生医療体験の受け入れは年間30~50人。今では年間300人ほどに。今年は薬学部奨学生だった学生が薬剤師になり入職しました。
 「成長した仲間を迎え、自分たちの医療に自信を持てるようになった。高校生が来ると患者さんも笑顔になり、それを見て職員もうれしくなる」と工藤さん。養護教諭をめざしながら何度も医療体験に参加した女子高校生は、看護師の道へすすむことになりました。
 「とはいえ、『毎年複数の医学部奨学生を』という目標は道なかば。学生と信頼関係を築きながら、学び、民医連を語っていきたい」と話していました。

(民医連新聞 第1694号 2019年6月17日)

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