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2019年6月18日

これでばっちりニュースな言葉 マイナンバーによる保険証一体化の危険 公益財団法人日本医療総合研究所 研究研修委員 こたえる人 寺尾 正之さん

 厚生労働省は、マイナンバーと保険証をつないだオンライン資格確認の導入をすすめています。しかし、番号漏えいや情報管理の問題が指摘されています。問題とねらいを公益財団法人日本医療総合研究所研究研修委員の寺尾正之さんが解説します。

 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律が、5月15日に成立しました。来夏に閣議決定する骨太方針2020に盛り込む、給付と負担の見直しの議論に向けて、医療保険システムの効率化、情報化をはかるための土台づくりが目的です。
 法案の一つである「オンライン資格確認の導入」は、健保法、国保法、高齢者医療確保法を改定し、被保険者資格確認の方法を法定化します。(1)マイナンバー個人番号カード(以下、カード)、(2)個人単位の番号を付した被保険者証(現行の世帯単位の被保険者番号に個人を識別する2桁の番号を追加する)、いずれかにより、保険医療機関・薬局で患者本人の被保険者資格情報を読み取り、資格喪失の有無をオンラインで確認できるしくみです。
 これで、資格喪失後の受診に伴う事務コストの解消や、高額療養費制度の限度額適用認定証の発行業務の削減などが期待されています。審査支払機関(支払基金・国保中央会)は、個人の被保険者番号や資格取得日、窓口負担割合などの資格情報の履歴を一元的に管理します。

■番号漏洩(ろうえい)の危険も

 政府のスケジュールでは、カードは2021年3月頃から、被保険者証は同年5月頃からオンライン資格確認を開始します。しかし、対応するかどうかは医療機関、薬局の任意としています。消費税10%への引き上げに伴う増収分を財源に「医療情報化支援基金」から、システムの初期導入費用を補助します。
 オンライン資格確認の方法は、患者本人が医療機関の窓口に設置されたICカードリーダーに、被保険者証の被保険者番号か、カードに内蔵されたICチップ内の電子証明書(符号)を読み込ませて手続きをします。読み込んだ番号や符号は、個人の被保険者資格、生涯履歴を一元管理している審査支払機関にインターネット経由で送信、照会します。審査支払機関は受信した番号や符号に対応する資格情報を確認、照合し、当該医療機関に資格情報を返信するという流れです。
 厚生労働省は、医療機関と薬局の窓口でカードを預かることや、マイナンバー番号自体を取り扱うことはないと説明していますが、高齢者など自力ではカードを読み込む手続きが困難な患者も来院します。医療機関の職員がカードの読み込みを介助、代行せざるを得なくなり、カードとの接触は避けられません。カードの紛失やマイナンバー番号の漏洩(ろうえい)などが発生する危険があります。

■情報が管理される

 今回の法案提出の背景には、カードの発行が1564万枚と人口の12%程度しか交付されていないことがあります。この遅れを打開し、カードの普及率を大幅に高めるため、まず被保険者証を代行する形でカードの使用を法定化するのがねらいです。次の段階では、被保険者証と一体化させた上で、原則カードを使っての受診にする方向です。
 2月26日に開催した政府の経済財政諮問会議では、佐藤ゆかり総務副大臣が「デジタル・ガバメント」閣僚会議の場で、「健康保険証との一体化」を含めたカード普及策の取りまとめを指示していたことが明らかになりました。
 現在、個人の特定健康診査情報と予防接種履歴がマイナンバー番号と紐づけられ、地方自治体や医療保険者で情報管理されています。今後、カードの普及で対象範囲が拡大し、個人の医療情報がマイナンバー番号と紐づけられ、情報管理される可能性もあります。
 オンライン資格確認は、被保険者証でも対応できるしくみですから、カードの使用を法定化する必要はありません。医療の効率化、情報化の名でカードと健康保険証との一体化がねらわれています。

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(民医連新聞 第1694号 2019年6月17日)

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