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2019年7月2日

日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (7)急増する失踪者 文・写真/榑松 佐一

 昨年末の入管法“改正”の法案文はわずかで、大半を政府が決めることになっていました。そのため国会では、法案の審議はほとんど行われず、もっぱら技能実習制度が議論され、そこで問題となったのが毎年増えている実習生の失踪です(図)。
 国は当初、失踪理由を「より高い賃金を求めて」と説明していました。ところが失踪者の調査表をみると、実習企業の不正を疑わせるものが多く含まれていました。中には最低賃金違反や不払い賃金、暴力などが疑われる記述もありましたが、実習企業への調査は行われず帰国させていました。野党議員が書き取った結果、67%で最低賃金違反が疑われるものでした。
 私のところにも逃げた実習生からの相談が増えています。中でも建設業と農業で、暴力や極端な賃金不足があります。月の手取りが2万円台のフィリピン人。土木工事は天候や公共事業の予算で仕事量が変動します。日本人は仕事がないとよそに行ってしまう。社長の話では元請けから仕事がきたとき、すぐに手を上げられるようキープしているそうです。日本人と同じ宿舎で飲酒して殴られたり、仕事でケガをして帰国させられるという相談もありました。
 国土交通省に問い合わせると、そのような統計はないとの回答でした。当時の失踪届けには職種欄がなかったのです。しかし、この2カ月後から法務省が失踪者の職種別統計をとり、その結果、半分が建設業と農業でした。もとむら伸子衆院議員が国会でこのことを追及。しかし国交省は「実習生を監督する権限がない」と厚労省と法務省に責任を押しつけました。
 建設業と農業はどの現場になるか行かないとわかりません。農業には労働時間の適用除外もあります。東京入管の元職員は「私たちが長靴をはいてキャベツ畑に行ってるだけでは不正はなくなりません」と言っていました。入管や労基署の監督には限界があります。業界を指導する省庁が受け入れに責任を持つべきだと思います。(続く)


くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など

(民医連新聞 第1695号 2019年7月1日)

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