いつでも元気

2019年7月5日

世界の子どもたち 
HIVと共に生まれる ウガンダ

安田菜津紀

カンパラ最大の市場、オウィノ・マーケット

カンパラ最大の市場、オウィノ・マーケット

 アフリカ東部のウガンダ共和国。大陸最大のヴィクトリア湖に面し、緑豊かな美しい自然に恵まれていることから、〝アフリカの真珠〟と呼ばれてきました。
 一方、ウガンダは長年にわたりエイズウイルス(HIV)が猛威を振るってきた国でもあります。HIVは血液や粘膜を通して体に入り込み、徐々に免疫力を奪います。免疫不全の状態になると、普段はかかることのないような病気にかかりやすくなり、エイズを発症してしまいます。ウガンダでは、このウイルスによって親を失った子どもたちが120万人にものぼるといわれています。
 首都カンパラは赤土の上に巨大なマーケットが広がり、魚や肉、服や日用品を買い求める人々でにぎわいます。そんな中心街の喧騒から少し外れた、トタン小屋がひしめき合う一角で、13歳のレーガン君と出会いました。
 お母さんはお父さんからHIVに感染し、レーガン君自身も生まれたときにお母さんの血液から感染してしまいました。お父さんは既に亡くなり、今はレーガン君、お母さん、そして両親をエイズで亡くした従妹の3人で暮らしています。お母さんの体調は安定しません。
 HIVは人から人へ感染する力が弱いウイルスです。一緒に食事をしたり、同じ教室で授業を受けても空気や皮膚を通して感染することはありません。しかしHIVへの理解は広がらず、レーガン君はたびたび傷ついてきました。
 「ウイルスを抑える薬を飲むと肌が荒れるんだ。だから学校の友達にも、すぐに感染していることが分かってしまう。〝病気をうつされる〟って、誰も僕に近づかなかったよ」。レーガン君はうつむきながらそうつぶやきました。HIVがもたらすのは医療の問題だけではありません。時には差別によって、感染した人々が精神的にも追い込まれてしまうことがあるのです。
 レーガン君の夢は、「弁護士になって、自分を守ってくれた家族を今度は自分が守る」ことです。その夢をかなえるために、兄は市場で働きながらレーガン君たちが学校に行けるよう支えています。
 以前は高価だった薬は、研究や支援が進むにつれてぐっと手に入りやすくなりました。HIVの正しい知識も少しずつ広がっています。レーガン君がもっと自由に夢を描ける日が、少しずつ近づいています。


安田菜津紀(やすだ・なつき)
フォトジャーナリスト。1987年、神奈川県生まれ。上智大卒。東南アジア、中東、アフリカなどで貧困や難民問題などを取材。サンデーモーニング(TBS系)コメンテーター。著書・共著に『写真で伝える仕事~世界の子どもたちと向き合って』(日本写真企画)『しあわせの牛乳』(ポプラ社)など

いつでも元気 2019.7 No.333

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