いつでも元気

2006年4月1日

元気スペシャル 有事 ここまできている 国民総動員体制

“医療労働者が一番にねらわれる”

 いま、アメリカのブッシュ政権による「米軍再編」が、地球的規模ですすめられています。日本に対しては、 (1)日米軍事同盟を世界規模で機能するようにし、(2)米軍基地の指令・出撃機能を強め、(3)米軍と自衛隊を一体化し海外派兵体制を強化する―ことを 求めています。これに応え、日本政府も、国民の反対を押し切って憲法九条を変え、戦争ができる国にしようとしています。蕫まさか﨟と思うあなた、国民を否 応なしに戦争協力に駆り立てるための「国民総動員体制」が、実はここまでできあがっているのです。

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2003年10月8日に公布・施行された公用令書の書式。すでに戦時中とうり二つの体制が作り上げられている

 「“いざ有事”となれば、『自衛隊法』(03年改悪)に基づいて、真っ先に動員されるのは医療労働者で す。蕫抵抗勢力﨟とみられる民医連のみなさんは、一番にねらわれるんじゃないですか。薬や医療機器も徴発の対象です。戦前の『徴用令書』と同じ『公用令 書』もすでにできあがっています。拒めば懲役か罰金です」―日本平和委員会代表理事の佐藤光雄さんは、こう指摘します。

3月中に全都道府県で策定

 04年に成立した「国民保護法」も急ピッチで具体化しています。「国民保護」とは名ばかり。米軍、自衛隊 が軍事活動を自由におこなうために国民を統制・管理・動員するための法律です(イラスト参照)。政府が「有事」を宣言すると、国民総動員体制がとられま す。「周辺事態法」(99年成立)にはなかった懲役刑や罰金が定められ、従わなければ「六カ月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金」です。

 政府は昨年三月、「国民保護に関する基本方針」を策定。武力攻撃事態では「着上陸侵攻」「ゲリラ・特殊部 隊による攻撃」「弾道ミサイル攻撃」「航空攻撃」の四類型、緊急対処事態では「危険物質を有する施設(原発、石油コンビナートなど)への攻撃」「大規模集 客施設(駅、映画館など)等への攻撃」「大量殺傷物質(炭疽菌、サリンなど)による攻撃」「交通機関を破壊手段とした攻撃」の四類型をあげ、各都道府県に 具体化するよう指示しました。

 七月には福井、鳥取両県の「国民保護計画」を閣議決定。今年一月二〇日、二一道府県から出された「計画」を閣議決定し、残る二四都県についても三月中に決定する予定です。ところが、こうしたニュースも全国紙は一段扱いです。

総動員体制へ世論づくり

 各県の「国民保護計画」具体化のようすを見てみると、昨年末からだけでも―。

 米軍基地に避難? 沖縄県は12月22日、有事の際の住民避難を定める県国民保護計画の素案を、県国民保護協議会に提示した。住民の「基地内避難」の検討を盛り込み、これには北部訓練場やキャンプ・シュワブを想定している。

■県民からは、「かえって攻撃のターゲットになる」「戦争になれば、軍は国民ではなく自分自身を保護する。戦争の体験に学べ」といった批判が上がっている。また、基地内避難について米軍は難色を示している。

 市町村にモデル案示す 福井県は12月26日、各市町村が国民保護計画を策定する際の参考にと、モデル案を各市町村に送付し、国にも提出した。今後、国民保護実動訓練の検証結果なども踏まえ、年度内に県版の「市町村国民保護モデル計画」を正式に作成する予定。

■政府と福井県は05年11月27日、関電美浜原発への「テロ攻撃」を想定した実働訓練をおこなった。自治 体や警察、自衛隊、地元放送局など一四〇機関から一三〇〇人と、地元住民が参加。しかし、「原発が攻撃を受けた場合、広範囲にわたって壊滅的被害が出る。 そんな事態に対処する方法などない。国民総動員体制への意識・世論づくりは明らか」と批判が出ている。

 柏崎刈羽原発、運転停止も 新潟県は1月25日承認された県国民保護計画の素案に、柏崎刈羽原発の運転停止なども盛り込んだ。知事が武力攻撃災害への対処や避難住民の救援などを円滑におこなう必要があると判断した場合、防衛庁長官に自衛隊の派遣要請もできるとしている。

日米共同演習に自治体も参加

 さらに「日米共同演習に自治体参加」という、次のような報道もあります。

 陸上自衛隊西部方面隊は1月30日、熊本市の陸自健軍駐屯地で、国民保護法に基づく有事の住民避難計画を 作成する九州・沖縄各県の担当者に対し、同駐屯地で実施中の日米共同指揮所演習「ヤマサクラ」についての研修を行った。共同作戦時の指揮系統などを確認す る同演習に、自治体担当者を招き研修を行うのは初めて。自衛隊と米軍が有事の際にどう動くかを確認してもらい、計画作成時の参考にしてもらうのが狙い。今 後の連携も強化するという。(共同通信1月30日配信)

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イラスト いわま・みどり
全国の放送局の戦争体制化がほぼ完成

 報道を国の統制下に置く放送局の「指定公共機関」も着々とすすんでいる。

 沖縄県内の民放5社は、これまで国民保護法に基づく「指定地方公共機関」の受諾を保留していたが、 2月6日、受諾の方向性を示した。民放労連は「本土の放送局はごく一部を除き、既に指定地方公共機関となることを受諾しており、いま沖縄の放送局が受諾す ることになれば、全国の放送局が『国民保護』の美名のもとに有事=戦争体制に組み込まれることがほぼ完成する」と声明をだした。

 政府は04年に、NHKと大手民放19社を含む160法人を「指定公共機関」に指定している。

在日米軍再編のもと本格化する言論弾圧

 国民総動員体制づくりを急ぐおおもとには、日米間で協議がすすんでいる在日米軍再編計画があります。再編のねらいは「米国防計画見直し」(2月3日発表)にも「長期戦争へ同盟国を動員する」と、はっきり書かれています。

 米軍再編協議の「中間報告」(05年10月)には、「空港及び港湾を含む日本の施設を、自衛隊及び米軍が 緊急時に使用する」ために「強化された日本の有事法制を反映する」と記し、続けて「(日米で)共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をと る」としています。

「機密」の処罰対象に民間人も

 「〇一年の自衛隊法改正で機密漏えいに懲役刑が導入され、懲役五年に改悪されました。自衛隊員が外の人に 話した場合はもちろん、機密に接する公務員や民間業者が話をしていても、機密漏えいの共謀とみなされると、三年の懲役です。今後、言論・集会の統制も厳し くなるでしょう」と前出の佐藤さん。「自民党内で検討されている地方公務員法改正案では、政治団体の結成・勧誘、機関紙の発行・配布を禁止、署名もデモも 街頭宣伝もすべて禁止しています」といいます。

 米軍再編計画の「最終報告」が出るのが三月。国民総動員体制づくりとぴたり符合します。

【在日米軍再編計画の主なもの】①陸軍=座間基地に米本国から陸軍第一軍団司令部を移転、②海軍=厚木に最 新鋭戦闘機配備、空母艦載機57機を岩国へ移転、岩国基地を拡大。横須賀に〇八年に原子力空母を配備、③空軍=横田の第5空軍司令部に日本の航空自衛隊総 隊司令部(東京・府中)を統合、④沖縄=普天間基地の辺野古移設・最新鋭化、⑤第3海兵隊司令部のグアム移転など。


立ち上がる地元住民 相模原/座間

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火の見やぐらの大きな垂れ幕が人目をひく(座間市)

 一方、再編計画に街をあげての反対運動も起こっています。

 「米陸軍第一軍団等の移転反対」「基地の下で七〇年。もう我慢の限界」―座間市と相模原市の市庁舎、公民館には、こんな幕が掲げられています。一月二九日、相模原市自治会連合会主催の「米軍基地強化反対市民大会」には、一二〇〇人の市民が集まりデモ行進もしました。

 「一九六〇年代後半のキャンプ淵野辺返還請求運動のとき、市長の提唱で市民集会を開きました。このとき自 治会や婦人団体などでつくる基地返還『期成同盟』ができました。以来、市長が会長を務め、自治会連合会や地域婦人団体、PTAなどが参加する『市民協議 会』へと運動が引き継がれています」と語るのは、神奈川北央医療生協理事長の中里龍夫さん。

 市民協議会は、昨夏、キャンプ座間早期返還を求める二〇万人署名に取り組み、市長も街頭署名に立ち、二一万人余の署名を小泉総理に提出しています。

 再編計画では、座間基地に陸上自衛隊の中央即応集団の司令部を新設、相模総合補給廠には陸自の普通科連隊を配置する予定。中里さんはいいます。

黙っていると100年先も!

 「座間には、蕫米軍の一番の部隊﨟がやってくる、補給廠には陸自の部隊が一三〇〇人もくる。これでは基地返還は遠のくばかりだ。もう我慢できない。やはりたたかわないと勝てない。そんな気運が市民の中にでてきている感じがしますね」

 「黙っていると一〇〇年先も基地の街」―横断幕に込められた市民の心意気が伝わってきます。

文・太田候一記者
写真・五味明憲

いつでも元気 2006.4 No.174

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