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2019年7月16日

「総がかり」で守ろう いのちくらし 21・老福連事務局長 正森 克也さん 権利としての社会保障を守る運動、全国の仲間で

 多彩な人たちと手を結び、総がかりでいのちと暮らしを守ろう―。今回は21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連合会(21・老福連)の正森克也事務局長です。介護の現場は、介護報酬改定によりさまざまな影響を受けています。その中で21・老福連は、公的福祉の確立、老人福祉の向上をめざし活動をすすめています。(代田夏未記者)

 21・老福連は全国の老人ホームの施設長有志の呼びかけで発足しました。1998年に実施した「介護保険・全国老人ホーム施設長アンケート」を皮切りに、3年ごとの介護報酬改定に合わせてアンケートを行っています。そこから問題点をあぶり出し、次の改定に向けて署名にとりくんでいます。

■介護難民と負担増

 「2015年の介護報酬改定で困っている」。18年改定後に実施したアンケートで多く寄せられた声です。介護保険の負担額があがり、デイサービスや訪問看護の利用をやめる、減らすなど、サービスの利用を控える事例が多くなりました。必ず自己負担が発生する介護保険では、「食事の負担ができないからデイサービスの利用をあきらめる」という事例も報告されています。
 特別養護老人ホームの入居条件が“原則要介護3以上”となり、要介護3未満の人たちは利用できないと思い、ケアハウスやサービス付き高齢者住宅に流れています。すると、職員配置基準の低い施設で多様な利用者を受け入れることになり、利用者にとって、適切な施設でのサービスを受けることができません。
 また、職員への負担もあります。利用者が多く一人ひとりにかかる負担が大きいにもかかわらず、職員配置が低いために、ひとりで多くの利用者を見ることになり、「こんなところで働けない」と退職してしまいます。事業所は職員の負担軽減のために職員を増やすと、収入は変わらないため経営が悪化してしまいます。
 しかし、特養への入所が制限された影響に関しては何も改善されていません。ふさわしい介護が受けられない利用者とあわせて、介護難民が増え、家族が負担することになり、介護離職へとつながります。そして、家族介護が痛ましい事件への入り口となることもあります。

■公的責任で保障を

 「介護の社会化」をめざし制定された介護保険制度は、3年ごとの見直しの中で、次第に「制度の持続」が改革の柱へと変化しています。介護保険制度が「高齢者の状態に合わせて利用する制度」から「高齢者の財布に合わせて利用する制度」へと変質しています。また、介護保険制度における加算は、事業所運営をより豊かにするものだったはずなのに、今では加算を取得しなければ経営が成り立たないしくみになりました。
 介護保険制度は老人福祉の一部であり総体ではありません。今、社会福祉や社会保障は憲法25条の生存権を保障するものから、自己責任や助け合いの制度とされ、公的責任が後退しています。
 私たちは老人福祉のほかに、子ども、障害者にかかわる社会福祉法人や、医療、年金などさまざまな社会保障に関係する人や団体と力を合わせて、こうした制度の後退に対峙していかなければいけません。
 そこで権利としての社会保障を守るために、社会福祉法人の全国組織を立ち上げようと準備をすすめています。
 来春には「権利を守る社会福祉法人経営全国会議(仮称)」を結成する予定です。利用者にとって必要なサービスが安心して受けられる社会福祉を求めて、多くの仲間と国に声をあげていきます。

(民医連新聞 第1696号 2019年7月15日)

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