民医連新聞

2003年6月2日

安心・安全の医療をもとめて(9)

東京健生病院

「じょく瘡チーム」の活動で予防の視点養う

 じょく瘡対策で診療報酬に「減算規定」が導入されました(〇二年一〇月実施)。減算対象にならないためには、対 策チームを設置し、基準にそった診療計画と対策をとる必要があります。あらためてチームの役割が重視されています。東京健生病院は九五年から「じょく瘡対 策チーム」を立ち上げ、活動しています。(小林裕子記者)

 同院には一三四床の一般病棟(三病棟)と二七床の回復期リハ病棟があります。対策チームは、各病棟から看護師各二人、医師、薬剤師、担当看護師長各一人 で構成。月二回半日、定例のチーム会議を開き、ミニ学習・じょく瘡のある患者の状況把握・回診・まとめを実施しています。

毎回のミニ学習
 この日のミニ学習は「じょく瘡発生要因のアセスメント」。発生のリスクを点数化して判定する「ブレーデンスケール(BS)」と、それを簡便化した「Kスケール」の比較検討です。担当の張替美冴看護師が違いを説明、女性患者を例に二つのスケールの点数を示しました。
 回診はチームリーダーの根岸京田医師(外科医)を先頭に。じょく瘡の具合をみて、評価、写真、計測、処置、チーム員はてきぱき動き、根岸医師は外科処置と細菌培養の指示をその場で行いました。

予防が主力
 じょく瘡治療の主体は病棟スタッフです。新規入院患者のじょく瘡の有無をチェックし、生活自立度を判定、診療計画書を作成します。対策チームは、病棟の 要請で臨時回診し、予防や治療方針を助言。それも「絶対」ではなく、患者の状態が変化すれば、病棟スタッフの判断で治療方針の変更もあります。チームの役 割は請け負うことではなく、よい方針を立てるための相談相手になることです。
 対策チームの目標は病棟スタッフ全体の力量アップ、メンバーはそれぞれ役割をもちます。看護師は各病棟の状況をもち寄り、チーム会議での学習内容や必要 事項をもち帰ります。医師は主治医と意見交換する役割を担当。薬剤師は、多様な治療薬の知見をチームに伝えます。高価な薬品が多いので、患者の状態に薬剤 が合っているかどうか、費用と効果の関係をチェックし、在庫管理します。
 「たった数時間の手術中にじょく瘡ができた経験もある一方、治す苦労が身にしみています。チームの活動で院内に予防の視点が養われた」と根岸医師。同院では体圧分散マットを一〇〇台購入し、危険度のアセスメントを徹底して予防。じょく瘡発生は減ってきました。

ラップ療法について
 治療法も、チームで討議します。とくに科学的な根拠があるのか(EBMの視点)が議論に。「たとえばラップ療法」と根岸医師。「この療法は根拠が不明確 では? という話になりました。瘡面は湿潤状態が良いが、その周辺の健常皮膚は乾燥状態が良いのです。ラップでは周辺部まで蒸れないかという疑問がありま す。医療用でなく食品用の材料を使う問題もあり、適用は限られると思います。じょく瘡治療にはまだ試行錯誤もありますが、たくさん出ている、スタンダード の本を参考に、くれぐれも慎重に」と話し、さらに「じょく瘡の初期の状況から治療過程までの記録が、治癒率を正しく判定するのに必要です。重症度分類と治 癒の過程を評価するツールとして、厚労省基準として採用された日本褥瘡学会の『DESIGN』に精通することも大切」とアドバイスしました。

(民医連新聞 第1309号 2003年6月2日)

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