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2019年8月6日

日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (9)技能実習法の施行後も 文・写真/榑松 佐一

 「実習生の保護と監督強化」を目的に技能実習法=「新法」が2017年11月から施行されました。新法は労働法・入管法の違反はもちろん、旅券や通帳を預かったり、時間外の外出を制限するなど人権侵害にも罰則を設けました。相次ぐ家賃ピンはね事件を受けて、寮費の基準など400ページに及ぶ「運用要領」もできました。違反があったときには実習生に「申告権(訴える権利)」が認められ、弁護士以外にも委任ができるようになりました。私も代理人になって申告をしています。
 旧法では実習生を受け入れる監理団体が届出制で、協同組合などの非営利団体をつくれば、1年後には書類届出だけで受け入れができました。新法では監理団体が許可制になり、技能実習機構が監督します。受け入れ企業も細かな実習計画を技能実習機構の地方事務所に提出します。また8カ国語で相談ができ、電話のほかホームページからも申告できます。技能実習機構は今年2月までに約2300件もの相談を受けています。
 一方で、新法により厳しい制度になりましたが、経過措置期間が長く、全面的に適用されたのは今年に入ってからです。これまで紹介した事件も新法適用と旧法適用の実習生で訴え先が違い、同じ実習生でも旧法の期間中については申告を無視されたりしました。
 また、この5年間に実習生受け入れが急増し、多国籍化しています。ネパール、ブータンなどからも来るようになりました。技能実習機構名古屋事務所の指導課は30人ほどで東海4県、5万人もの実習生を担当しています。まったく追いつきません。民間組織である機構には労基署・入管のような強制調査の権限がありません。そのため、新法施行後も不正が減っていません。私はこの1年半に55件の相談で38件を申告しました。暴力や貯金・旅券の取り上げなど、人権侵害も少なくありません。 (続く)


くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など

(民医連新聞 第1697号 2019年8月5日)

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