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2019年8月20日

フォーカス 私たちの実践 認知症高齢者を地域でささえる 高知・生協介護の窓口  「困った」を助け ひとり暮らしができる 地域のケアマネ支援

 介護保険のサービスに拒否がある認知症患者に対し、高知・生協介護の窓口では、本人の「困った」を助けるインフォーマルなサービスで、その人らしく地域で暮らすことを支援。苦情を一手に引き受け、地域のやさしさを引き出しました。第14回看護介護活動研究交流集会で、ケアマネジャーの畑山八重さんが報告しました。

 認知症の高齢者が地域でひとり暮らしを続けるには、どのような支援や地域の見守りが必要かを考えた事例を報告します。

【事例】Aさん 90代女性
 要介護2、独居、身よりなし、生活保護を利用。高度の難聴。診断名は高血圧、糖尿病、認知症(長谷川式6点)、数年前に腰椎圧迫骨折。毎日の通所を計画し、そのほか、一時的な訪問介護、しぶしぶ受け入れたショートステイ、金銭管理、急きょの配食。

■「困った」に地道に対応

 通帳や印鑑、現金、鍵をなくすことがAさん本人の困りごと。呼応するように銀行や量販店、交番、病院から“困った”情報が入りました。ケアマネといっしょに受診予定を立てても待てずに行き、通所は行きたい時だけ。送迎を拒否し、とんでもなく早い時間や遅い時間に行く、高度難聴で呼びかけに気づかず、自宅での安否が確認できないこともありました。
 Aさんの個性に合わせ、ケアマネは外勤時に「通所に来てね」と手紙を入れるようにしました。通所は本人が行きたい時に参加できる体制にし、来ない時は安否確認を兼ね、職員が誘うなどしました()。ケアマネの名刺を地域に配り、「何かあれば連絡を」と頼みました。ケアプランで計画した定期サービスは拒否するAさんでしたが、本人の「困った」に反応して助けるスタイルなら受け入れることがわかってきました。
 次々と地域から電話が入り、対応に追われるような支援の中、本人の意思決定や生活スタイルを尊重する視点がぶれないように、なぜそのような行動に出るのか、要因を分析。今後どのような健康上の問題が発生しどうなるのか、予後予測を立てるため、課題整理総括表を用いて整理しました。
 その結果、サービス支援体制、ケアプラン内容は継続。個性を生かしつつも、水分補給と食事の確保、服薬に留意しました。徐々にショートステイ中心のプランに移行し、自宅以外でも安心して他者の健康管理を受けられる環境に移れるよう支援しました。
 本人は歩くことが健康のバロメーターだと思っており、在宅生活上のポイントでもありました。各事業所がそれを認識し、自立支援の強い味方になっていました。
 地域では配食業者が交番にあいさつに行ってくれて警察とつながりました。警察官が保護した際に「ひとりはもう無理。施設に入りなさい」と説得もしてくれました。通所職員とケアマネのかかわりや、配食業者の臨機応変な対応と地域で見守る姿勢、なじみの銀行員や交番、不動産屋、隣の部屋の住民のやさしい対応がなければ、住み慣れた自宅での生活はもっと早くに破綻していました。
 高齢による下肢筋力低下で行動範囲が狭まり、徐々に買い物や外出に支障が出ることが予測されました。支援者側も疲弊し、限界の見極めが必要となっていました。

■寛容なコミュニティーを

 Aさんは自宅近くの路上で転倒し、頭部裂傷で救急搬送され入院。その後はグループホームに入居し、元気に生活しています。
 今回の事例から、ひとり暮らしの認知症高齢者へのケアマネ支援とは、支援者側の困りごとと本人の困りごとを分け、本人が欲していることを明らかにし、サービス利用につなげる地道な対応だと考えます。地域支援とは、食に関する手助け、つながろうとする住民の姿勢、地域で見守る目と声かけ、これらを無理なく、ちょっとした気持ちと手助けでできることからやってもらうことや、地域のムードだと考えます。その中でケアマネの支援も生きてきます。
 認知症460万人時代が到来し、認知症があっても偏見なく地域でともに暮らす寛容なコミュニティーづくりが求められます。

(民医連新聞 第1698号 2019年8月19日)

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