医療・看護

2019年8月20日

相談室日誌 連載469 Me Too(私も同じです) 共生社会をめざして(東京)

 「ねぇ、森田さん、あの事件、精神障害の人がやったって…。私たちのことを怖い、って思う人が増えるんじゃないかな。不安だよ」。ある患者は、周囲をはばかるように話しかけてきました。私は「犯罪を犯す、その一線を越えてしまうのは、精神障害があろうとなかろうと同じだと思う」と答えました。その患者は「そうだよね。私もそう思う」と、今度ははっきり言いました。
 神奈川・津久井やまゆり園の障害者殺傷事件から3年が経ちました。その報道に心を揺さぶられている当事者は大勢いると思います。国が入院治療から地域移行へと方向転換をはかってしばらく経ち、さまざまな法整備がされました。しかし、人の心のバリアフリーはまだ先になりそうな感じがしています。
 精神科デイケアは1974年に診療報酬で点数化されました。当時、長期入院解消のため、退院後の受け皿として多くの病院や診療所で開設されました。デイケアがあり、デイケアで仲間と生活を送ることが病状の安定につながり、大きな役割を果たしてきました。2005年に障害者自立支援法が施行され、地域に就労に、特化した施設が次々とでき、就労を目標とするメンバーの増加でデイケアの役割も変化していきました。代々木病院の精神科デイケアには10代から80代まで、疾患も統合失調症、双極性感情障害、うつ病、発達障害など多岐にわたり、1日20人前後のメンバーが通っています。
 現代の日本は、個の自立が強く求められています。けれど、時代は変化しても変わらないデイケアの役割は、多様性を認め合うコミュニティーの形成だと思います。そして人とのつながりをつくっているものは、「私も同じだ」という葛藤と共感であるように感じています。
 民医連綱領は、話し合いによる民主的な問題解決、という精神が貫かれています。メンバーが直面している問題に対し、対等・平等に向き合うこと、共生社会の実現とはそこから始まるものなのだ、と感じて日々過ごしています。

(民医連新聞 第1698号 2019年8月19日)

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