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2019年9月3日

日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (11)新しい受け入れ制度「特定技能」 文・写真/榑松 佐一

 昨年末に新しい在留資格「特定技能」を設ける入管法改正が行われ、4月に施行されました。昨年5月に閣議決定して、施行まで1年足らず。これまでの技能実習制度の改正では国会提出まで2年、審議に半年以上、さらに成立後施行まで1年かけたことと比べると異例の早さです。法文はわずかで、施行直前の3月に全体と各分野別の運用要領が発表されましたが、未だにわからないことがたくさんあります。特徴はこれまで「移民政策につながる」と否定してきた単純労働者を受け入れること。「人手不足解消のため」という宣伝が禁じられてきた技能実習制度と大違いです。
 技能実習制度では相次ぐ不正と人権侵害に対する国際的批判が続いたため、実習生の保護と監督強化を目的とする技能実習法が施行。しかし「特定技能」には労働者保護規定はなく、受け入れ機関への罰則もわずか。厳しい技能実習法が施行された直後に入管法改正が出されたことからも、技能実習法逃れと感じます。技能実習制度の監理団体は許可制で要件も詳しく問われましたが、これに代わる「特定技能」の「登録支援機関」は届出制で、必要な書類をそろえれば受理され、個人登録も可能です。拒否要件はわずかで、極端な話、自ら暴力団を名乗らない限り届出は受理されます。
 実習生が自ら会社を変われないことが不正が続く1番の原因でもあります。日弁連は「受け入れ先を告発すれば自らも帰国せざるを得ない構造的問題だ」と指摘しています。「特定技能」では企業移動の自由が認められます。しかし、賃金が高い首都圏や都市部に集中するおそれもあり、地方では危機感が広がっています。
 課題だらけの法案の成立をなぜ急ぐのか問われた法相は「早くしないと外国人が帰ってしまう」と答弁しましたが、7月末までに認められた特定技能在留資格は100人足らず。本音は参議院選挙前にやりたかっただけでしょう。実際にはこれから次々と問題が出てくると思われます。(続く)


くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など

(民医連新聞 第1699号 2019年9月2日)

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