介護・福祉

2019年9月3日

相談室日誌 連載470 若年層患者の退院先に苦慮 居住の権利を保護する対策を(京都)

 当院は京都府の都市部から北部へ離れた地域にあります。当院には47床の回復期リハビリテーション病棟があり、近年では若年層の紹介も増えています。私はソーシャルワーカーとなり4年目を迎え、経験も重ねる中、現行の法制度では、ニーズに合わせた保障が十分に確立できていないと感じています。
 Aさんは50代の女性。脳出血により重度の感覚障害と高次脳機能障害が残り、常時身の回りの介助が必要な状態でした。自宅復帰のため6カ月に及ぶリハビリにとりくみましたが、十分な機能回復はかないませんでした。何度も本人や家族と話し合い、Aさんは障害者施設への入所を希望しましたが、介護保険が優先されることや近隣に障害者の長期入所施設がないことから、介護保険を申請し、退院先として老人保健施設を選択しました。受け入れ先も若年者の前例がなく、時間はかかりましたが、何とか施設への入所が決まり、退院しました。
 Bさんも50代の女性。脳出血の既往がある中、3回目の発症で歩行状態が不安定になり、移動には見守りや介助が必要でした。もともと有料ホームで生活していましたが、Bさんにとって有料ホームでの暮らしは苦痛が多かったこともあり、今回の発症を機に退居。新たな退院先を検討することになりました。Bさんは介護施設への入所を希望しましたが、やはり若年者の前例がなく受け入れ困難と判断されました。Bさんは「長い将来を安心して暮らしたいだけなのに…」と納得いかない気持ちを口にしました。相談の結果、やむを得ずサービスを導入しアパートで独居生活を送ることになりました。
 憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とありますが、現在の法制度には、私たちの居住の権利を守るための明確な水準や対策はありません。国は社会的責務として、住み慣れた自宅や地域で、状態が変わっても生活を送ることを保障する必要があるのではないかと、事例を通じて考えます。

(民医連新聞 第1699号 2019年9月2日)

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