いつでも元気

2019年9月30日

友達の暮らす場所 マニラで「友情のレポーター」 
フィリピン

バゴンシーランの市場。多くの子どもたちがここで働いている

バゴンシーランの市場。多くの子どもたちがここで働いている

 アジアの国々で教育支援を行う国際協力NGO「国境なき子どもたち」(KnK)が、「友情のレポーター」というプログラムを続けています。日本に住む11~16歳の応募者の中から選ばれた2人に、KnKが活動する国を取材してもらう取り組みです。今年のレポーターの伊藤里久さん(15歳/新潟県)と高橋叶多さん(15歳/埼玉県)は、フィリピンの子どもたちを取材しました。
 フィリピンの中心地、マニラ首都圏には東京のようなビルが建ち並んでいますが、富を握るのはほんの一握り。2人が出会ったのは、路上で寝泊まりをしたり、日中は物乞いなどをしながら日々を過ごしている子どもたちでした。
 夕方、ショッピングモール脇の広場の片隅では、寂しさや空腹を紛らわすためにシンナーを吸っている子どもの姿さえあります。
 「楽しみ? 学校に行ったこともないから、そもそも何が楽しみなのかも分からない。だからいつか学校に行ってみたい」とミッシェルさん(14歳)。「学校に行くという自分にとっての“当たり前”が、彼女にとっては夢なんだ」―。伊藤さんは衝撃を受けます。
 路上生活を免れても、子どもたちの置かれている状況は厳しいものです。スラム地区では、働いたり家族の面倒を見るため、学校を中退し貧困から抜け出すことが難しくなってしまう悪循環に陥りがちです。
小学校を4年で中退
 マニラ首都圏で最大の貧困地区ともいわれるバゴンシーラン。アレックスくん(13歳)は小学校を4年生で中退し、市場で荷物運びの仕事を続けています。「今は親戚の家を間借りしていますが、誰かが家賃を払ってそこを借りたいと言えば、僕たちはその人が出て行くまで他の場所でしのぐ。その繰り返しです」と不安定な日々を語ります。
 アレックスくんの話を聞いた高橋さんは、「何とか小中学校を卒業しても、問題はその先。子どもたちが最低限の生活を脱する壁は予想以上に高いものでした」と複雑な心境を明かします。
 それでも出会った子どもたちは皆、2人を温かく迎えてくれました。アレックスくんは快く暮らしている家に招いてくれ、ミッシェルさんは数少ない持ち物の中からヘアバンドをその場でプレゼントしてくれたのです。
 レポーター2人にとって、もうこの国は「発展途上国」という曖昧なイメージの場所ではありません。大切な時間を共に過ごした、友達が暮らしている場所なのです。

国境なき子どもたち 1997年に日本で設立された国際協力NGO
 これまで15カ国(地域)で9万人以上の子どもたちに教育機会を提供し自立を支援してきた


安田菜津紀(やすだ・なつき)
フォトジャーナリスト。1987年、神奈川県生まれ。上智大卒。東南アジア、中東、アフリカなどで貧困や難民問題などを取材。サンデーモーニング(TBS系)コメンテーター。著書・共著に『写真で伝える仕事~世界の子どもたちと向き合って』(日本写真企画)『しあわせの牛乳』(ポプラ社)など

いつでも元気 2019.10 No.336

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