いつでも元気

2019年9月30日

心をつづって(新連載)

得丸浩一

いつかうらぎられる
友達ってそういうもの

 転勤して担任することになった六年生。初日、あかねは机に突っ伏してこっちを向こうとしなかった。あかねはバレーボールのクラブチームに入っていた。同じクラスでは智佳子と二人だけ。修学旅行のグループ決めも、あかねと智佳子だけで組んでいた。
 ところが、あることをきっかけに、二人の関係は決定的な破局を迎えた。智佳子は地元のクラブチームをやめ、遠くのチームに入った。その頃、あかねはこんな詩を書いた。

私の友達
最初はみんな仲が良い
でもそれは最初だけ
友達にはいつかうらぎられる
たとえ親友でも
いつかうらぎられる
友達ってそういうもの

 あかねは休み時間になると隣のクラスに出かけ、同じクラブチームの女子と話すようになった。クラスの中で孤立するのも怖い。新しい友達を求めるがなかなかうまくいかない。痛々しい。
 あかねと話そうと家庭訪問したが、あかねは「無理」と言って二階に上がってしまい、仕方なく母親と話した。若い母親は以前、銀行引き落としにならなかった諸経費を持って学校へ来たことがあった。母親は自身の離婚に触れ「あかねに影響があるだろうか」と心配そうに話していた。
 その日、あかねと話せなかったことがどうしても気になり手紙を書いた。一部を紹介する。

あかね様

 この前、お母さんには思っていることを話した。でも、「今後どうしたらよいか」は話せなかった。分からなかったからだ。情けない担任でごめん。
 智佳子がクラブチームをやめてから、あなたはとっても大変な思いをしてきた。自分で意識しているかどうか分からないけど、一組でたった一人になってしまった中で、二組のバレーボールのメンバーとはうまくやらないといけないし、一組の中でも智佳子以外の仲良しを作らないといけないし、それはとっても大変だったと思う。そしてそれが今も続いている。
 あなたの詩を読んだ。裏切られたあなたの辛さは痛いほど分かる。それまでの二人の様子を思い起こすとよけいにその思いが強くなる。智佳子は生まれたときから病気で、長く入院生活を送ってきた。病気を克服しクラブチームに入ることを決意した。そしてあなたと一緒にやってきたわけだ。
 情けない担任は、家族が寝静まった今、家のパソコンに向かっていろいろ考えながらこうしてキーボードをたたいている。何も解決しないだろうと思いながらも、あなたに伝えられなかったことを打ち込んでいる。

 京都市の小学校教師、得丸浩一さんが、作文や詩を引用しながら今を生きる子どもと教師の姿を描きます。


得丸浩一(とくまる・こういち)
1957年生まれ。京都市の小学校教師。京都市教職員組合執行委員長、日本作文の会副委員長。
著書に『おもしろいけど 疲れる日々』(本の泉社)

いつでも元気 2019.10 No.336

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