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2019年10月8日

フォーカス 私たちの実践 データを活用し看護の質向上 宮崎生協病院看護部 ケアのデータ化で課題が見え改善につなげる

 宮崎生協病院看護部は、看護の質を評価し、強みと弱みをデータで捉えて着実に改善、地域の中での自院の役割を明確にし、地域の課題の克服をめざしています。第14回看護介護活動研究交流集会で、総看護師長の小牟田佐知子さん(現在は、宮崎医療生協の看護介護統括部長)が報告しました。

 当院は内科、外科、小児科を標榜する124床のDPC病院です。HCUを含めた7対1の一般急性期、回復期、慢性期と、小さいながら全ての病床機能を持ち、地域の在宅をささえ地域密着型の医療を提供しています。長期計画の中では、地域の健康づくり、まちづくりの視点で地域包括ケアシステムの一翼を担うことを方針化しています。職員数239人、平均年齢39歳、看護師107人は全職員の48%を占めています。
 看護部では2015年から日本看護協会の労働と看護の質向上のためのデータベース(DiNQL)事業に参加し、データをもとに質改善をすすめてきました。看護サービスの質評価として、ドナベディアンの提唱する「構造」「過程:プロセス」「結果:アウトカム」の指標から分析し、改善にとりくみました。急性期病棟を例に紹介します。

■強み、弱みが見えてきた

 「ケアの構造指標」は、看護職員配置など医療が提供される諸条件を見ます。DiNQLでは他施設や病棟ごとの比較ができるベンチマーク評価が有用です。2018年4月から3カ月の急性期病棟のDiNQLデータを、同事業に参加する全国の同規模医療機関と比較しました。
 看護職員配置は6・7対1と中央値で(以下( )内は中央値)、病床利用率90%(87・2%)、平均在院日数10・7日(12・9日)でした。
 緊急入院が63・3%(40・9%)と多く、超過勤務時間は前年比1・5倍で内訳は入院業務が4割を占めました。救急車の受け入れは月平均73・3件で前年比116%でした。
 次に「ケアのプロセス指標」は医療看護の提供過程を見ます。褥瘡(じょくそう)発生率は1・3%(0・6%)と高く、危険因子評価率は78%(75・7%)ですが、体圧分散用具使用割合が77・6%(86・5%)と低い結果でした。治療を必要とする転倒・転落発生率4・3%(2・0%)、危険因子評価率77・6%(83・1%)でした。
 入院患者の6割が75歳以上で、危険行動患者0・22点(0・16点)と若干高いものの、身体抑制率は0・8%(8・2%)で急性期の病棟で抑制しない努力をしていました。
 在宅療養カンファレンス開催率3・62%(9・19%)、他職種とのカンファレンス実施率32%(52・2%)も低い結果でした。
 「アウトカム指標」は、患者満足度など提供された医療看護の結果を見ます。退院患者のほとんどが在宅復帰しますが、再入院率は高く1・79%(1・08%)。退院患者の満足度調査では、5段階評価で接遇等は4・8に対し、退院指導は4・3と全体で一番低い結果でした。同時期に行った医療職のワークライフバランスインデックス調査も「組織が職員を大切にしているか」に「そう思う」と答えた看護職は47・6%と、2年前の72%から大きく後退。他職種と比較しても低い状況でした。「専門性を発揮できている」と答えた割合も34・6%と低く、看護業務の見直しを他職種と協力してとりくむ必要性を示していました。職員の職務満足度は、看護の質向上に重要な指標となります。

■データから改善へ

 以上のことから、看護師が入院業務に時間を割かれ、早期からの必要な退院支援ができていないとわかりました。
 そこで、地域連携室の看護体制を強化し入院支援を開始。入院早期から、退院支援に入れるよう改善しました。病棟では退院に向けた多職種カンファレンスを定期的に実施しています。
 褥瘡、転倒・転落については危険因子評価を確実に実施することをめざし、体圧分散用具の学習会や、毎朝の安全カンファレンスの充実をはかりました。

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 DPCデータやQIデータも含め、データから地域にある他院の強みを学べば、当院の強みを地域の中で打ち出せます。どう地域をささえるか、課題を明確にするためにも、ベンチマーク機能を活用した看護の強み、弱みの可視化は重要です。管理者のデータマネジメント力を高め、各部署の具体的な目標管理と連動させ、看護の質の改善を継続します。

(民医連新聞 第1701号 2019年10月7日)

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