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2019年10月8日

消費税10%ストップ! 弱い立場の者に負担を強いるゆがんだ税制 集め方、使い方に主権者として声をあげよう 消費税は社会保障財源にはならない 生活は困窮し、いのち削る受信抑制も 全日本民医連 藤末 衛 会長

 安倍政権は多くの世論を無視し、10月から消費税増税を強行しました。増税と同時に導入される複数税率やキャッシュレス決済のポイント還元で、買う商品、買う場所、買い方によって、増税後の税率は10%、8%、6%、5%、3%と5通りにも。また生活に余裕がなくなり、受診控えによるいのちの危険も予想されます。消費税についての民医連の考え方を藤末衛会長にインタビュー。9月12日に開催された増税ストップの国会内集会の模様を取材しました。(長野典右記者)

 この10月から消費税が10%に増税されました。直近の日本世論調査会の調査でも6割近い人が反対しています。あらためて、国民の世論を無視し、安倍政権が強行した10%増税に抗議します。

■一部負担金や生活費増

 医療や介護の現場で働いている実践者として、増税の影響を地域の人たちの感覚や行動を通じて正確につかむ必要があります。
 まず、増税による医療や介護への直接的な影響について。医療機関への消費税の補填(てん)のために診療報酬が上がることで、患者や利用者の一部負担金が増えます。医療費などは患者さんには非課税といいながら、実際には負担が増えるのです。
 次に、間接的な影響について。食費や生活費の負担増で出費が増え、必要な医療や介護を手控えることになれば、医療や介護へのアクセスがいっそう落ちることになります。病気がちな経済的困窮者が医療機関にかかるために削るのは食費だ、という想像力を働かせなければならないと思います。また、事業が赤字でも消費税を納税しなければならない多くの零細企業主は、事業継続と健康保持の二重の危機となりかねません。

■8割が法人税減税の財源に

 社会保障と税の一体改革で、消費税は社会保障の財源と言いながら、実際は社会保障給付の自然増まで削減し、医療や介護の自己負担金が増えています。消費税による税収は、所得税、法人税とお金の色に差はなく、政府が使い方を提案し国会が決定します。
 消費税は社会保障財源というより法人税減税の穴埋めのために使われてきたと言っても過言ではありません。1990年から2017年までの28年間、税率引き下げや大企業優遇措置などで失われた法人3税(法人税・法人住民税・事業税)は累計で280兆円。一方、消費税の税収は累計で349兆円。約8割が法人3税の減税に消えているのです。消費税は医療や介護制度を十分守る財源にはなっていないのです。

■恩恵にあずかれない弱者

 社会保障をよくするために消費税を思い切って上げるという論理は、最も経済的に困っている人びとから生活を守るための社会保障を取り上げる論理であり、間違っています。消費税増税反対の声すらあげにくい人たちに負担を強い、政治をすすめているのが今の政権の実態です。制度の枠組みを維持しても、恩恵にあずかれない人が増えていく、医療と介護が一番必要な人に届きにくくなるのです。いわば、いのちを削るのが消費税です。
 日本の税収の内訳をみると、消費税が法人税や所得税より大きな財源にシフトしてきています。社会が生み出す富の再配分になっていない。根本的な問題です。

■所得の大きい人に負担を

 大飯原発を止めた福井地裁の判決文には、原発を止めると国の富を損なうという被告の陳述に対して、「このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」と論じています。
 税金の取り方を誤ると、人のいのちにかかわるという想像力が政府に求められると思います。やはり、所得の大きいところから順に集めることが、公平な税の取り方の基本ではないでしょうか。

■地域でたたかい続ける

 私たちはこれからも医療や介護の現場から、消費税増税がいかにいのちを削るのか、事例をもって社会や地域に告発、発信していきます。10%引き上げの中止をかかげ、引き続き地域でのたたかいをすすめていきます。所得税や法人税、資産への課税など公正な税制による財源の実現で、人権としての社会保障実現へ大きな前進となるように、社会保障制度、財源論の分野でも共同をつくり出せるように運動を強めましょう。
 ※10月1日、全日本民医連は「消費税10%への大増税強行に抗議する」声明を藤末衛会長名で発表。全文は全日本民医連HPで。

直ちに国会開催し増税中止に

大企業に応分の負担を

9月12日国会内集会

 9月12日、「10月消費税10%ストップ! ネットワーク」は、衆議院第2議員会館で、43万筆(累計108万筆)の10%増税中止署名を、立憲民主党、国民民主党、日本共産党の国会議員に提出し、「直ちに国会を開いて増税中止を」と訴えました。会場は400人の参加者で満杯となり、議員会館前では200人が参加し、緊急行動が行われました。
 参加した野党の議員が、複雑極まりない複数税率やポイント還元、中小商店の4分の1でしか増税の準備ができていない実態に触れ、実質賃金が7カ月連続で下がる中、消費税増税は無謀だと批判。消費税は税金にあるまじきもっとも逆進的な制度であり、アベノミクスでもうけてきた富裕層や、内部留保が過去最高の大企業に応分の負担を求めるのは当然だ、と訴えました。
 呼びかけ人の医療制度研究会副理事長の本田宏さんは、どの世論調査でも社会保障や生活は国民の関心が高いことを紹介し、「消費税増税を中止させよう」と呼びかけました。

■各分野から阻止求め

 東京大学名誉教授の醍醐聰さんは、「政府は消費税10%を財源に幼児教育・保育の無償化を打ち出しているが現在でも低所得者は減免されており、ほとんど恩恵がない」と指摘。政府は来年6月で終わるキャッシュレス決済のポイント還元に代わって、消費活性化策としてマイナンバーカードを持つ人を対象にポイント還元を検討しています。しかし同カードが14%しか普及していない理由は、個人情報の心配があるからだと指摘。「このようなポイント還元をしないと消費がすすまないのなら、最初から増税する必要はない」と述べました。2%で増収5・7兆円でも、軽減税率、ポイント還元などの補填で3・8兆円がマイナスになり、1・9兆円しか残りません。
 一方でアメリカから兵器を爆買いしていると指摘。税金の集め方と使い方について「主権者として声をあげるべき」と訴えました。
 全国FC加盟店協会会長の庄司正俊さんは、「今、コンビニは店の負担で増税対策をすすめています。先日、暑い中、おでんの10%割引セールを行いました。すると売上が3~4倍になりました。10%がいかに大きい数字なのか、買い物のたびに10%を負担することはとても重い」と紹介。沖縄で、政府が辺野古新基地建設を強行しても決してあきらめずたたかっていることを例にあげ「それに学んであきらめないで10%阻止をすすめましょう」と述べました。
 フロア発言では、税理士が、中小企業が複数税率で混乱している実態を紹介。精神障害で生活保護を受けている50代の男性は、「生活保護費がこの秋から引き下げられる中での増税は死活問題」と訴えました。三重で歯科医院を開業する歯科医師は、消費税を患者に転嫁できず、損金となる医療機関の実情を告発しました。

* * *

 最後に、ジャーナリストの斎藤貴男さんが、「消費税は弱い立場の者ほど多くの負担を強いられるゆがんだ税金で、社会そのものもゆがんでしまう。軽減税率を求める新聞社は権力におもねり、ポイント還元のキャッシュレスは超監視社会を招く。10%を阻止しましょう」とあいさつしました。

(民医連新聞 第1701号 2019年10月7日)

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