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2019年10月22日

これでばっちりニュースな言葉 悪化する日韓関係 問題の根本にあるものは 歴史教育者協議会 こたえる人 関原 正裕さん

 日韓関係がかつてないほど緊張しています。韓国から日本への旅行者は激減。マスコミも韓国へのネガティブキャンペーンをくり広げています。解決のためには何を基本に考えるべきなのか。歴史教育者協議会の関原正裕さんの解説です。

 昨年10月の韓国大法院の元徴用工への損害賠償請求を認めた判決以来、日韓関係は悪化の一途をたどっています。日本政府が半導体製造の材料の輸出規制、輸出管理の優遇対象国(ホワイト国)除外という措置をとると、韓国はGSOMIAの破棄という安全保障問題で対抗し、解決の糸口が見えてきません。
 日本のマスコミは「いつまでも過去を蒸し返す韓国」といった嫌韓ムードを煽る報道をしています。しかし、問題の本質は植民地支配に対する歴史認識にあります。

■「徴用工」とは

 政府は戦時中の徴用工を「旧朝鮮半島出身労働者」と呼んでいます。日本本土と同じ労働者だったという見方です。戦前の植民地支配のもとで朝鮮人は形式的には「日本人」でしたが、朝鮮から動員された労働者は日本の労働者と同じように扱われたのでしょうか。
 1937年の日中戦争の開始にともない、政府は戦時に必要な労働力と物資を動員するために国家総動員法(38年)を制定します。39年には日本国内の鉱山や工場などでの労働力不足を補うため、供給源のひとつに「移入朝鮮人」を位置づけて動員することを閣議決定しました。45年の敗戦までに動員された総数は約67万人(表)。事故などで亡くなった人は1万2603人とされていますが、実際はこの数倍にのぼると推定されます。
 多くは、炭鉱や軍需工場などで劣悪な労働環境のもと、危険で過酷な作業をさせられ、十分な食事も与えられず、逃亡防止のために賃金も支払われませんでした。炭鉱では落盤や爆発などの危険をともなう坑内で就業させられ、奴隷のように暴力によって管理・強制されました。逃亡する朝鮮人は絶えませんでした。
 このように、徴用工は日本人労働者とは違う差別的な扱いを受け、重大な人権侵害のもとで過酷な労働を強制されました。植民地支配下の非人道的な強制労働の実態に向き合うことが、徴用工問題を考える上で最も大事なことです。

■「解決済み」か

 日本政府は、65年の日韓請求権協定で5億ドルの資金を韓国に提供し、請求権は「完全かつ最終的に解決」したのだから、元徴用工への損害賠償を認めた韓国大法院の判決は「国と国との約束」を守らない、国際法に違反するものだ、と抗議しています。
 当時の日韓交渉で最大の対立点は、植民地支配に対する認識でした。韓国側が日本の植民地支配は不法で不当だとしたのに対し、日本側は合法であり正当であると主張しました。結局、植民地支配の歴史認識は曖昧なまま締結。5億ドルはあくまでも韓国の経済発展のための「経済協力」資金であり、不当な植民地支配の被害への賠償という意味は一切なかったのです。
 ですから韓国大法院判決は、元徴用工の損害賠償請求は、朝鮮半島への不法な植民地支配に直結する日本企業の反人道的不法行為を前提として請求する慰謝料であり、日韓請求権協定の適用対象には含まれない、としたのです。正当な植民地支配だったとしても、個人の肉体的・精神的な被害に対する損害賠償は、請求権問題が国家間で解決しても消滅しない、と日本政府が国会で答弁しています。

■南北朝鮮の統一を

 昨年来、朝鮮半島は平和と南北統一へと世界史的な激動の情勢を迎えています。日本の敗戦直後、米ソが南北を分割統治した背景には、36年間にわたる植民地支配で朝鮮の国家主権が奪われていたことがあります。
 朝鮮戦争と今に至る南北分断は朝鮮の人びとに計り知れない苦難を強いました。この責任を負う日本は、南北統一を前にすすめる北東アジア地域の環境づくりに努力すべきです。そのためには植民地支配の歴史に向きあい、日韓両国の信頼関係を築くことです。


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(民医連新聞 第1702号 2019年10月21日)

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