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2019年10月22日

「総がかり」で守ろう いのちとくらし 高等教育無償化プロジェクトFREE事務局長 中野 典(つかさ)さん 学生の実態を力に 学費値下げは不可能ではない

 多彩な人たちと手を結び総がかりでいのちと暮らしを守ろうー。今回は、高等教育無償化プロジェクト(通称‥FREE)の中野典(つかさ)事務局長です。学費・奨学金実態調査アンケートで明らかになった厳しい実態を変えようと動き出しています。(丸山いぶき記者)

 FREEは、高等教育の学費や奨学金制度の改善をめざし活動する、大学生や専門学校生、大学院生を中心としたアドボカシー(社会的な弱者の権利擁護・代弁)グループです。2018年9月に発足し、現在、関東圏を中心に125人余りがLINEグループに登録。民医連の看護専門学校の学生も参加しています。
 この間、学費・奨学金実態調査アンケートにとりくみ、新宿でイベントも行い注目されました。

■食費1日300円?!

 現在、国立大学の学費は年間約54万円、入学金は約28万円です。私立はさらに高額です。アンケートで、進学先選びの際に学費を判断基準にしたか問うと「非常にした」が27%、「少しした」が34%でした。医学部では「非常に」46%、「少し」32%、看護は「非常に」43%、「少し」39%と、いずれも全体より高い傾向。看護学生からは「4年制大学に行きたかったが、お金がかかるので諦めた」との声が多くあがりました。
 学生生活でアルバイトをしている人は8割超で、学習や睡眠時間を削られているとの声もありました。驚いたことに、仕送りが全くない学生が、33・6%もいました。医療系学生は実習が始まるとアルバイトができません。実習先への移動の交通費も自費。実習中に「交通費が賄えない」「食べていけない」「土日もアルバイトで休めない」と深刻な実態でした。
 奨学金を借りている人は返すことを意識して進路を決めていました。もし今、学費が無償になったら、「アルバイトを減らす」「一人暮らしをしたい」「食費を1日300円から増やす」などの回答が。
 書いていて泣けてきたという学生が何人もいました。アンケートの設問は5つに分かれており、どういう思いで進学し、お金の問題がどれだけ受験期、入学期、学生生活を制約し、将来の選択肢を狭めているか、あらためてわかるからです。そして、無償ならと問われ、「本当はしたいこと」があふれてくるからです。私たちはアンケートを通し「苦しいと言ってもいいよ」と広げたいのです。
 自己責任論がまん延する社会ですが、直接声をかけてくれる人はみんな、FREEの活動を応援してくれます。1年余りの活動を通し、学費の大幅値下げを実現することは不可能ではない、と確信しています。

■本当の「無償化」へ

 高等教育では、教養を身につけるだけでなく、自分で考え解決する姿勢、人生を生き抜く方法を学びます。私はFREEのような他大学と交流する活動で、広い視野と豊かな人間関係を培いました。誰でもいつでも何度でも学べるようになれば、もっと多様な価値観に出会えるはずです。
 一方、政府が「高等教育無償化」をうたい、消費税増税分を充てるとして成立させた修学支援法のもと、中所得世帯が免除対象から外される可能性が高まっています。政府が事実上容認する学費値上げも、各大学が検討を始めています。
 FREEは年末にかけて、来年度からの国立・私立大学の学費値上げと、修学支援法に伴う各大学独自の授業料免除制度廃止の中止を求め行動します。署名を集め学長に要請し、10月25日には初めて、学費値上げと制度後退に抗議する国会前集会を行います。“抗議”に抵抗がある若者も多く、ためらってきた活動ですが、今の情勢ではそうも言っていられません。
 アンケートには、学生1人ひとりの人生の重みが込められています。FREEには、その声を託された社会的責任があります。実態を力に声をあげ続けます。

(民医連新聞 第1702号 2019年10月21日)

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