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2019年10月22日

民医連は地域の明かり 停電の中、地域訪問でつながる 千葉・いちはら協立診療所

 9月9日未明に上陸し、関東各県に大きな被害をもたらした台風15号。特に千葉県では最大で約64万戸の停電、住宅損壊は2万軒にもおよびました。3日間停電に見舞われたいちはら協立診療所を取材しました。(長野典右記者)

 「屋根が吹き飛ぶような猛烈な風で、家族はすぐ避難できるように着替え、1階のリビングに集まりました」と師長の今川恵さんは振り返ります。千葉市内では9日午前4時28分、瞬間最大風速57・5メートル。県内観測史上最大値を更新しました。市原市内の今川さんの自宅も停電し、3日間、水風呂の生活を余儀なくされました。
 事務長の大竹美子さんは「井戸水を使っている家も多いのですが、停電で汲み上げることができず、公園まで汲みにいっている人、車中泊している人の姿も。職員も被災し、ストレスで眠れない状況だった」といいます。
 診療所も停電し3日間休診。1週間前の9月2日に稼働したばかりの電子カルテが停電で使えず、受診にくる患者には紙カルテで情報を確認しながら診察、処方対応しました。主治医意見書を発行している人、独居、高齢者の世帯は携帯電話で連絡し、容体や薬の有無などの状況確認を行いました。

■長期化で精神的ケア必要

 いちはら協立診療所健康友の会副会長の倉沢とし子さんも「電気はいつかつくだろうと思っていたが先延ばしになり、暑さによる疲労が続いた。防災無線の声が聞き取れず、支援物資の情報などが届かなかった」と語ります。「自宅が損壊したので、ショートステイに行くと、1泊1万円の全額自己負担を求められた例もあった」と会長の石原正人さん。
 診療所は地域訪問を開始。11日は5人の職員で50軒を訪問しました。「停電中は冷たい物が口にできないことが本当につらかった」「歩けないため役所に食料をとりに行けない」「電話が使えず、ヘルパー宅も停電しているので頼めない」「住宅の修理の見通しがたたない」「行政は何もしてくれないのに、診療所はここまでしてくれるの」などの声を聞きました。
 今川さんは「地域訪問をすると、最初は気がはっていた人も、時間が経つにつれて不眠を訴えるようになり、精神的なケアを痛感した」と語ります。13日まで県連などの職員も加わり、合計で約75軒を訪問しました。「多くの人が避難所に行っていない中、地域訪問は重要なとりくみと感じた」と大竹さん。友の会会員宅にある手動式の飲料用井戸が地域の人たちに喜ばれました。

■設備の更新遅れる東電

 現在、復旧に向けて動き出していますが、ブルーシートに覆われた住宅もあります。住宅の修理が半年先になることや、修理費用、費用の負担割合など多くの問題が明らかになっています。政府は台風15号を激甚災害に指定することを決めましたが、国や県の初動が遅れたこと、コスト削減で鉄塔や電柱の更新が遅れた東京電力の責任も明らかになりました。
 友の会事務局長の笈川(おいかわ)賢治さんは、「共同組織拡大強化月間では、80歳以上の高齢者を中心に地域訪問し、被害の状況や行政への要求などを聞き取りながら、目標100人の仲間増やしにつなげたい」といいます。
 今川さんは「地域に明かりがあれば人を引き寄せることができる、診療所が避難できる場所になる役割が大切になってくる」と語りました。今回の経験から所長の荒原健男さんは「このような災害は常に起こりうるとの前提で診療所の活動を見直す必要を感じた。また訪問で、高齢者が予想以上に地域に多く、『高齢者が安心して暮らせる地域づくり』が急がれることを実感」とのべました。

(民医連新聞 第1702号 2019年10月21日)

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