Dr.小池の世直し奮戦記

2006年5月1日

Dr.小池の国会奮戦記 これでは産婦人科医がいなくなる 事故から24時間以内に通報しないと逮捕!

 産婦人科医の不足が深刻です。

お産は抽選か先着順で!?

 岩手県の医師会報によると、陸前高田市、遠野市、花巻市、合併前の千厩町、江刺市で地域中核病院から次々 産科が撤退し、最寄りの病院へ行くにも車で1時間も2時間もかかる。このため移動中の車の中で出産してしまったなどの例が相次いでいるといいます。新幹線 は停まる町でも、産科医はいないのです。

 神奈川県でも足柄上地区1市5町で分娩ができる病院は1カ所だけ。月10件が限度だということで、お産は 抽選か先着順で受けつけることにしたそうです。こんなことが全国で起きています。少人数の医師が自己犠牲的にがんばって、出産という危険性の高い医療行為 をおこなわざるを得なくなっているのが現状です。

 こうしたなか昨年12月、福島県立大野病院で帝王切開手術中に大量出血して患者さんが亡くなり、2月に産 婦人科医が逮捕、起訴されました。亡くなった女性と遺族の方の無念さは、想像にあまりあります。しかし、医師の「逮捕・起訴」には、強い疑問と批判が巻き 起こっています。

貧困な体制は不問に付し

 この病院でも産科医は一人だけでした。貧困な体制は不問に付され、執刀医は刑事責任を問われて、回診中に、患者さんの前で手錠をかけられる。これでいいのか。こんなことが続けば地域から産科医がいなくなってしまわないか。

 異常死の届出義務(医師法21条)の問題も浮かび上がりました。死因に「法医学的異状」があった場合、医師が24時間以内に警察に通報しなければいけないという法律です。

 そもそも殺人事件などを想定した法律が、最近ではなし崩しに医療事故にも適用されています。刑事責任を問われる可能性のある医師に通報義務を課し、しかも死亡から24時間以内に届けなかったら逮捕する。これはすごいプレッシャーです。

 医療事故の際、大切なのは、まず原因の究明ですが、警察が問題にするのは「犯人は誰か」だけです。

責任追及より事実解明が先

 私は3月22日の参議院厚生労働委員会で、医師法21条の改正を求めるとともに「外国では、医療事故は第 三者機関によって死因の特定など事実解明をおこない、それを通じて、医師の診療行為に問題があれば責任追及をするという仕組みになっている。日本もこの方 向に進むべきだ」と要求しました。厚労省も不十分ながらモデル事業を始めています。

 厚労大臣は、私の質問に対して「労働量や責任に対して報酬が低い、医療訴訟が多い、当直、不規則な診療時 間がストレスになっている」ため、産科医が減っていると認めています。産科医や助産師の増加をはかり、病院の経営上も報われる仕組みをつくること、地域で 安心して出産できる体制を整備することが急がれます。

 生命を社会に迎える最初の場面が過酷な労働と緊張とストレスにあふれている。こんな悲しい現状はなんとしても変えなければいけません。

いつでも元気 2006.5 No.175

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