医療・看護

2019年11月19日

診察室から 不定愁訴はキーワード満載

 昼休み。初期研修医が同期と昨日の救急当直の振り返りをしていました。「90代女性が、胸痛を主訴に救急車で来院してね、バイタルは安定、血液・心電図・レントゲン・胸部CTまで調べても原因が特定できず、困ったよ」「不定愁訴じゃないかな、精神的なものが原因なのかもしれないよ」。
 横で話を聞いていて、研修医が一生懸命難しい患者にとりくんだことは理解できましたが、「不定愁訴」「精神的」の言葉が少し気になりました。「不定愁訴」と言いたくなる患者の愁訴には、大きく分けて2つ。「実は原因があるのだが、医師が力不足で診断に至れないケース」と、もうひとつは、「どんなに調べても原因が特定できないケース」です。
 「不定愁訴」だと思っても、前者のようなケースがありうるため、安易に「精神的なもの」と決めつけずに、症候診断学等を駆使して、極力診断に迫ろうと努力すべきだし、「精神的なもの」が本当に疑わしいのであれば、きちんと「精神病名」をつけるべきだと日々研修医に指導しています。
 しかし、どんなベテラン医師でも困るのが後者のようなケースです。対応に苦慮するため、「精神的なもの」に原因を押し付け、患者を敬遠してしまうことがよくあります。
 そんなやっかいな「不定愁訴」に対応するために、とても有用な方法があります。東洋医学的視点を持ったアプローチです。東洋医学では人体は自然の一部で、一つの小宇宙を形成していると考えます。患者のさまざまな愁訴は、人体の小宇宙を形成する「気・血・水」の流れのゆがみによって起きると捉えているのです。これを用いると、「不定」に感じていた患者の訴えは「キーワード」満載の訴えに変わり、患者の状態が評価でき、「漢方薬」という治療法まで導き出すことができます。
 漢方専門医の私の影響を受けてなのか、時々漢方治療にハマる研修医がいます。患者の「不定」に見える訴えを、興味を持ち真剣に聞くようになると、一人前です。

(松岡角英、千葉・南浜診療所)

(民医連新聞 第1704号 2019年11月18日)

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