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2019年11月19日

相談室日誌 連載475 介護保険料滞納で利用料は3割 社会制度として矛盾も(山梨)

 冬の寒い日に救急搬送された70代の男性、Aさん。臀部には巨大な褥瘡(じょくそう)ができていました。何年も入浴しておらず、着衣には汚れが目立ち、ゴミに埋もれた室内から搬送され、一時は生命が危ぶまれるほどの深刻な状態。病院からの相談を受け、かかわることになりました。
 Aさんの状態は徐々に改善。介護保険の申請をして要介護5の認定を受けましたが、介護保険料未納による3割負担の給付制限がありました。Aさん夫婦は無年金で、働けなくなったAさんの代わりに妻が朝から晩までパートをかけもちし、何とか生計を立てていました。介護サービスにはお金がかかるという意識から、妻は相談をためらっていた、とのことでした。
 生活保護も検討しましたが、世帯分離の難しさなどから難航。並行して年金事務所で受給該当の年金が判明し、一時金として150万円がAさんに支給されました。当面はそれを利用料にあて、長期のショートステイを利用することになりましたが、給付制限の3割負担のため、月々の利用料は20万円に上りました。年金が尽きるのは時間の問題。その時には生活保護の申請になりますが、困難が予測されます。
 Aさんのように、介護保険料の滞納で必要なサービスが利用できない人が少なくありません。入院前にも、Aさんの妻は保険料の督促が来るたび市役所に相談に出向き、未納分を少しずつ納め、完済しました。しかし時効になった分の給付制限は数年残ります。給付制限で、結果的に生活保護になる時期を早めることは、社会制度としての矛盾を感じざるを得ません。
 保険料の滞納を市町村が把握した時点で、滞納することのリスクの説明や、支払い能力に応じた分納などの相談・対応が必要です。同時に、滞納に陥っている人の生活背景を早期に把握し、必要な支援体制を構築することで、Aさんのように問題が深刻化したり、重度化することを防げるのではないでしょうか。困難を早期に発見し、支援機関につなぐ役割や相談体制の構築が大切だと思います。

(民医連新聞 第1704号 2019年11月18日)

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