いつでも元気

2006年6月1日

療養病床23万床削減 高齢者の行き場を奪う医療改悪法案

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「地域医療を守れ」とおこなわれた市民集会(根室市、3月11日)

根室ではすでに病院が閉鎖!!

 「2012年3月までに介護型療養病床13万床を全廃、医療型は25万床を15万床にする」。今国 会に上程された「医療制度改革関連法案」で、政府は大規模なベッド削減計画を打ち出しました。しかも7月から、入院患者の医療必要度を分類する「医療区 分」を導入。最も「医療必要度が少ない」とされる「医療区分1」の場合、保険から支払われる入院基本料が大幅に引き下げられます。病院を締め付け、ベッド 閉鎖に追い込むものです。

長期入院できる病院がゼロに

 この改悪で、3月末、北海道・根室市の病院が「経営への展望を失った」と閉院してしまいました。市内で唯一、療養病床75床(医療型32床・介護保険型43床)を持っていた根室隣保院附属病院です。長期入院のできる病院が、根室市になくなってしまいました。
 同病院では閉院の理由としてほかに、(1)医師・看護師の欠員補充が困難、(2)昨年10月から介護型では食費・居住費が全額自己負担となったため、月 3万円も患者負担が増え、経営が悪化したことをあげています。地元新聞は「医療制度改革ひずみくっきり」と見出しを立てました。
 入院していた患者は57人中38人が他の病院や施設に転院(うち18人は市外)。入所先がなく自宅に帰らざるをえなかった患者さんは19人(14人は施 設待機)。うち2人は退院後まもなく亡くなってしまいました。政府は「社会的入院をなくすため」といいますが、特別養護老人ホームの待機者は、現在でも全 国で38万5000人以上。療養病床をなくせば、高齢者はますます行き場を失います。

一般病床にも大きな影響

 隣保院労組の組合員らは入院患者の転院対応に奔走。根室の地域医療を守る連絡会も結成され、患者の医療継続を求める署名は半月で人口(3万2000人)の4割に達しました。
 釧路協立病院事務長の高橋香織さんは「療養病床をもつ病院ではどこでも悲鳴が上がっている。今後、隣保院と同じような問題が各地で起こる可能性がありま す」といいます。「当院でも診療報酬引き下げの影響を試算した結果、2つの療養病棟は15%以上の減収。気を失ってしまいそうなダメージです」
 市内の病院を訪問し、療養病床削減反対の団体署名をお願いすると、「診療報酬引き下げで20%の減収。やっていけなくなるかもしれない」「深刻な影響で 予算もたてられない。会議を重ねても対策が見あたらない」など怒りが渦巻いていました。そもそも療養型は、3年前に厚労省が一般か療養かどちらかにせよと 選択を迫ったもの。設備投資して療養型にしたばかりという病院も多いのです。
 「療養病床がなくなったら、入院日数の短縮を迫られている一般病床も、転院先を失い大変なことになります。これほどの改悪は、対応策だけでは切り抜けら れない。患者の受療権を守ることと、医療経営を守ることを重ねて、住民のみなさんといっしょにたたかって事態を打開したい」と高橋さんは語っています。

(道東勤医協組織課 田中博修)

いつでも元気 2006.6 No.176

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