副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2019年12月3日

副作用モニター情報〈530〉 加味逍遥散などの山梔子(サンシシ)含有漢方製剤による腸間膜静脈硬化症

 山梔子を含む漢方製剤の長期投与に伴う腸間膜静脈硬化症については、2018年に重大な副作用としての記載が4製品から14製品に増えました。黄連解毒湯による副作用は、当副作用モニター情報(464回=2016年8月15日付)に掲載しましたが、加味逍遥散でも報告がありました。
症例) 85歳女性。初来局時には、すでに加味逍遥散を服用しており(服用X年)、処方継続。服用X年+2年後、下痢発現。2日後下血もあり、ワーファリン減量。3日後大量下血にて、ワーファリン中止。腹痛もあり。6日後ワーファリン再開。14日後血便。34日後、大腸内視鏡検査。炎症があり、びらんが目立つなど腸間膜静脈硬化症が疑われ、加味逍遥散中止。中止6日後下痢などの自覚症状は消失。生検結果、腸間膜静脈硬化症の所見あり。

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 13年の厚生労働科学研究の結果で、腸間膜静脈硬化症患者の8割以上が山梔子含有漢方薬を5年以上服用していたことから、13、14年に、加味逍遥散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、茵蔯蒿湯の4製品の重大な副作用に、腸間膜静脈硬化症が記載されました。
 その後、15~17年度の国内副作用症例として、生薬の山梔子とそれを含む漢方薬14製剤に腸間膜静脈硬化症に関連した症例が86例あり、うち13例は因果関係が否定できないとされました。そのため、厚生労働省は18年2月、生薬山梔子とその含有製剤14製品について、重大な副作用の項に腸間膜静脈硬化症の追記を指示。重要な基本的注意の項に「山梔子含有製剤の長期投与(多くは5年以上)により、大腸の色調異常、浮腫、びらん、潰瘍、狭窄を伴う腸間膜静脈硬化症が現れることがある。長期投与する場合は、定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うことが望ましい」と記載されました。
 山梔子を含有する漢方製剤を長期服用する患者が、腹痛、下痢、便秘、吐気・嘔吐などの症状をくり返したり、便潜血陽性になった場合は、投与を中止し、CTや大腸内視鏡などの検査を行う必要があります。漫然とした長期投与も要注意です。定期的な検査も行いましょう。
(山梔子を含む漢方薬)
茵蔯蒿湯、温清飲、黄連解毒湯、加味帰脾湯、加味逍遥散、荊芥連翹湯、五淋散、柴胡清肝湯、梔子柏皮湯、辛夷清肺湯、清肺湯、防風通聖散、竜胆瀉肝湯

(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)

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