くすりの話
2006年6月1日
くすりの話 87 関節症にグルコサミン?
Q:グルコサミンとは何ですか?
A:グルコサミンは膝の痛 みなど、変形性関節症の症状改善に役立つサプリメント(栄養補助食品)として、売られています。アメリカでは、1997年に関節症の治療をグルコサミンで おこなう本が出て、ブームとなりました。その影響を受けて日本でも最近知られるようになりました。
ヨーロッパでは医薬品として使われている国もありますが、アメリカではサプリメント、日本では食品として売られ、法律で規制されています。
グルコサミンは単純な糖の一種で、人の体内で作ることができます。サプリメントとして利用するものは、カニやエビの殻を原料として、その中のキチンという物質を分解して製造されます。
関節の骨と骨が接する部分でクッションとなる、軟骨の材料としてグルコサミンは利用されます。同じように軟骨の材料となる、コンドロイチン硫酸を一緒に入れた製品が多くみられます。
Q:グルコサミンの効果は?
A:骨関節炎に対して、海外でおこなわれた複数の臨床試験で有効性が示唆されています。ただし、販売業者がスポンサーになった研究が多く、結果の信頼性に対しては疑問が残っています。
重篤で長期にわたる変形性関節炎に対しては、矛盾した研究結果が出ています。以前の研究では効果が期待できないとされていました。ところが、2005年 11月に報告されたアメリカの大規模研究では、患者全体ではサプリメントの有効性は示せなかったものの、中等・重度の患者に対しては有効性が示唆されたと しています。
日本での研究は規模が小さい上、薬理効果がない「偽薬」を投与した患者との比較をしていない点で、不十分なものしかありません。なぜ効果があるのか、ど れくらい服用すればよいのかという基礎的な研究も、これからの段階です。
消炎鎮痛剤と同じ程度に、痛みを止める効果がある可能性はあります。ただし、今後の研究によって評価が変わることもありそうです。
Q:私たちが注意する点は?
A:単純な物質であり、私たちの体内にもともとあるものなので、副作用はあまりありません。お腹が張るなど軽い胃腸症状は報告されています。カニやエビに対してアレルギーのある方は、服用を避けましょう。
グルコサミンは糖の一種です。糖尿病、高脂血症の方には治療の妨げになりますから、ご注意ください。
また、グルコサミンの最大の問題点は、医薬品ではないため、品質が確かな製品を知る方法がないことです。さらに、誰に効くかもはっきりわからないことがあります。
関節痛がある中年以降の方は、信頼が置けるメーカーの製品を試してみてもよいでしょう。ただし、2カ月ほど使ってみて痛みの軽減が見られないようでした ら、関節痛の原因が軟骨再生力の低下ではない可能性があるので、整形外科の診察を受けるようにしましょう。
いつでも元気 2006.6 No.176
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