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2020年1月21日

病床削減、受診抑制… 民医連病院に求められる役割とは 第2回病院長・事務長会議で議論 79法人197人が参加

 全日本民医連は昨年11月30日~12月1日の2日間、東京都内で第2回病院長会議(病院長・事務長会議)を開きました。42県連79法人から197人(うち医師77人)が参加しました。地域医療構想と診療報酬改定、医師の働き方改革、新専門医制度など病院をめぐる情勢の特徴を学び、各病院のとりくみや教訓を交流。民医連病院の管理運営のレベルアップと病院管理部・院長に求められる内容について考えました。
(長野典右、丸山聡子記者)

 全日本民医連の藤末衛会長があいさつ。「安倍政権のもとで地域医療構想がすすみ、民間病院の病床削減の流れが強まっている。医療へアクセスできない層の増加も明らかになっており、対応が求められている。2020年は民医連綱領改定から10年。今後の方針づくりのために活発な意見交換と議論を」と呼びかけました。
 記念講演は、山梨・郡内共立福祉医療会理事長の石原秀文さんが「山梨の倒産と再建から学ぶ 私の民医連人生に触れながら」と題して行いました。1983年に山梨勤医協が倒産という事態に直面し、30代で理事長に就任した石原さん。「破産やむなし」と言われ、「甲府共立病院への信頼が裏切られた」と怒りが広がる中、職員が心をひとつにし、1年間で7回約8000人の債権者を訪問するなどして和議を結び、再建した経験を語りました。
 再建を成功させた力として「民医連綱領の立場にかえって、その方針へ結集すること」「民主主義の徹底と、職員ひとりひとりが再建の主人公となり団結を何よりも大切にしたこと」「民主的・科学的管理運営の徹底。民主的な規則・システムづくり」など6点を強調しました。(講演の詳細は『民医連医療』4月号で掲載予定)
 病院委員会委員長で全日本民医連副会長の増田剛さんが問題提起。同委員の山本明広さんが、特別報告「医師の働き方改革から民医連病院の現状と課題」を行いました。

 5人の病院長が指定報告をしました。概要を紹介します。

苫小牧から北見に飛び込んで見えたこと

北海道・北見病院 菊池 憲孝さん

 2006年から勤医協苫小牧病院に勤務。14年に道立病院が閉院となり、地域から結核病床が消え、呼吸器内科医が減少し、じん肺・石綿健康管理手帳健診の継続が困難となり、呼吸器内科専門医プログラム研修を受けました。
 18年、北見病院の院長が急逝。全道医局会議を経て「北見病院と苫小牧病院には類似点がある。北見には呼吸器内科医も少ない。自分にできることがある」と院長を引き受けることを決意しました。
 北見市は人口減少と高齢化がすすみ、市内に在宅療養支援病院はなく、訪問診療を行う医療機関は少なく住民のニーズに合っていません。訪問診療機能を伸ばすとともに、市医師会とも協力して医療機関・在宅サービス・介護施設との連携をすすめていきます。

笑って死ねる病院の経営

石川・城北病院 大野 健次さん

 当院は年2回、医局職責合同会議を開き、経営のみをテーマに議論しています。現在、病院を建て替えています。今年度の経営改善のポイント「緩和ケア病棟の算定開始」「病棟編成の変更」「HCU(高度治療室)の算定開始」を伝える全職員集会では、「入院患者が減少しているのになぜ忙しいのか」「職員は何をするべきか」などの意見が出されました。
 緩和ケアとHCUの算定の経営効果はありますが、ベッド稼働率が少しでも落ちると予算割れの危険があり、低い診療報酬の影響で経営改善がすすみません。無差別・平等の医療という民医連魂を引き継ぎ、職員に深く浸透させること、困難な時こそ原点に立ち返ることを、院長として心がけています。

みんなのかかりつけ病院「あすかいさん」に

京都民医連あすかい病院 中川 裕美子さん

 当院は安井病院の時代、「お金はあるときに払えばええ」と、いのちの平等を信条に「やすいさん」と親しまれました。京都民医連第二中央病院を経て2019年4月、リニューアルを機に京都民医連あすかい病院となりました。
 07年からの10年間、毎年億を超える赤字を出していました。4月に院長に就任し、「19年度は事業利益で黒字を確保し構造転換を確実にやりきる」と宣言。院長・副院長・医局体制を確立し、(1)医局運営を重視し、多様性を認める職場・人材を育成する、(2)医療・医学、運動や一般知識を学習する医局・病院、(3)民医連運動にみんなでとりくむ、(4)経営活動の工夫、全職員の時間外労働の削減、をすすめています。未来志向で、地域の人に「あすかいさん」と呼ばれる病院をめざしていきたい。

激動する情勢の中、鳥取生協病院はどう歩むのか

鳥取生協病院 皆木 真一さん

 鳥取市内には当院を含め4つの急性期病院があります。2008年にリニューアルし、病棟再編で急性期から亜急性期へ移行してきました。16年からは生活支援病院がコンセプト。圏域医療を守る地域連携が求められています。
 17年の地協経営検討会で適切なベッドコントロール、病棟看護業務改善などの指摘を受け、断らない救急、ベッドコントロールの強化、病棟看護師の業務改善、チーム力アップ、病院内運営の見直しにとりくんでいます。
 「治しささえる生活支援病院としての機能を総合力で強化する」「憲法を守り、綱領を守る経営」を基本テーマに経営の立て直しを検討しています。安心して住み続けられるまちづくりへの参画を目標に、職員一丸でとりくみたい。

激動する情勢と民医連病院の課題

福岡・健和会大手町病院 吉野 興一郎さん

 当院はICU6床・HCU15床、一般病床(7対1)370床、障害者施設等一般病床54床、地域包括ケア病床54床で、地域支援病床、災害拠点病院が特徴です。
 医療安全について、毎朝、院長、事務長、総師長、医療安全責任者で会議をし、インシデント・アクシデント報告の対応について検討。病院法務部の設置も検討し、医事紛争・訴訟対応、コンプライアンス、規定整備をめざしています。毎年の災害訓練には、職員、近隣病院のDMAT隊員、市消防局も参加。全職員に緊急連絡/安否サービスを導入しました。
 九州・沖縄地協内で領域別専門プログラムを作成し、大学病院、市中病院のプログラムに入るなど民医連内外の研修拠点として連携をはかっています。「医療・介護活動の2つの柱」の理念を伝え、民医連的なキャリア形成課程を築くことが引き続きの課題です。

(民医連新聞 第1708号 2020年1月20日)

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