MIN-IRENトピックス

2020年2月14日

けんこう教室 
高血圧

鹿児島生協病院 内科 仲田 太郎

鹿児島生協病院 内科
仲田 太郎

 日本は世界でもトップレベルの平均寿命を誇りますが、これには日本人の血圧が低下したことが大きく影響しています。
 60歳代男性で見ると、1961年の平均は最高血圧159mmHg/最低血圧88 mmHg(以下、同じ順番)でしたが、2016年には139/83 mmHgまで低下しました。血圧が低下したことで、高血圧の重大な合併症である脳卒中、特に脳出血が大幅に減少し、平均寿命の延びにつながったのです。
 血圧が高くなればなるほど、合併症である脳や心臓の病気で亡くなるリスクは高くなります。これは血圧が高いと血管がダメージを受けて動脈硬化が進行し、血管が破れて出血したり血管が詰まってしまうためです。また高血圧は、体中の血管に悪影響を及ぼし、失明、腎臓の障害などさまざまな合併症を引き起こします(図1)。

 

症状がない!?

 昔より血圧が低下している今日でも、脳や心臓の病気で亡くなる方の約半数は高血圧が原因と考えられています。高血圧の治療をしていてもコントロールが不十分だったり、高血圧を自覚しながらも治療していない方や、自身が高血圧であることに気づかない方もいます。
 なぜこのようなことになるのでしょうか。高血圧だけでは基本的に症状が現れないため、放置されたり、自覚するのが遅れたりしやすいからです。
 しかし高血圧をそのまま放置していると、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞などの致命的な合併症を引き起こします。これが高血圧の怖いところで、普段は静かにしていますが、ある日突然“殺し屋”に変貌するのです。それゆえ高血圧は“サイレントキラー(沈黙の殺人者)”と呼ばれます。
 重要なのは日頃から血圧に気をつけ、合併症が起こる前に予防を心がけることです。

正常血圧の基準

 血圧には測定する場所によって、“診察室血圧”と“家庭血圧”があるのをご存じですか。病院に行くと緊張して普段より血圧が上がることが多いため、高血圧の診断や治療では診察室血圧より家庭血圧を重視します。
 正常血圧の基準は、家庭血圧115/75mmHg以下(診察室血圧120/80mmHg以下)で、これを超えていると血圧が高い状態です。この場合、血圧がさらに上がらないように、家庭血圧をチェックしながら生活習慣の改善に取り組みます。
 さらに家庭血圧が135/85 mmHg以上(診察室血圧140/90 mmHg以上)になると、高血圧と診断されて受診・治療を勧められます。
 血圧の目標値は年齢や合併症によって異なりますが、基本的に75歳未満の方は家庭血圧125/75mmHg未満(診察室血圧130/80 mmHg未満)、75歳以上の方は家庭血圧135/85 mmHg未満(診察室血圧140/90 mmHg未満)が目標となります()。
 目標血圧を確認したら、日々の家庭血圧を測定することを強くお勧めします。毎日血圧を測定して記録することで、健康管理の目安となり、受診・治療をするうえでも重要な判断材料になります。
 家庭血圧の測定の仕方は、次ページの図2を参考にしてください。血圧計には上腕用や手首用などの種類がありますが、上腕用が最も信頼性が高いと言われています。起床時と就寝前の毎日決まった時間帯に測定し、血圧手帳に記録してください。

受診・治療

 正常血圧を超えているすべての方は、生活習慣の改善が推奨されます。
 生活習慣の改善によって、血圧はどのくらい下がるのでしょうか。減塩により血圧は約5mmHg、健康的な食事で約6mmHg、減量で約6mmHg、運動で約4mmHg、節酒で約3mmHgほど下がると言われています。1つ1つの降圧効果はそれほど大きくありませんが、“合わせ技”で改善すれば大きな効果があります。
 生活習慣改善のポイントを以下6点にまとめました。
(1)減塩 日本人の食塩摂取量は1日平均約13gですが、これを6gまで減らすことが目標となります。まずは塩や醤油、味噌をいつもより少し減らすことから始めてみてはいかがでしょうか。
(2)健康的な食事 野菜や果物に多く含まれるカリウムには、血圧を下げる働きがあります。ただし腎臓が悪い方はカリウムを制限する必要があり、注意が必要です。
(3)適正体重の維持 肥満の方は、体重を1kg減らすと血圧が1~1・5mmHg下がります。
まずは1kg減量を目指しましょう!
(4)運動 毎日30分間、軽く汗ばむ程度の速さでウオーキングやジョギングをするのがお勧めです。膝や腰などが痛い場合は、プールでのウオーキングも効果的です。
(5)節酒 過剰な飲酒は高血圧だけでなく、がんの原因にもなります。ほどほどにしましょう。
(6)禁煙 禁煙補助薬などもありますので、やめられない場合は病院に相談してください。

服薬(薬物療法)

 生活習慣を改善しても血圧が下がらないときには、服薬が必要になります。医師の指示に従い、用法・用量を守って服用してください。
 血圧の薬を飲み始めてもなお、血圧が下がらないこともあります。その場合、(1)血圧を上げる内分泌ホルモンが出過ぎている、(2)睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている、(3)サプリメントや薬剤(痛み止めや漢方薬)の影響で血圧が上がっている等々、思わぬ原因が背景にある可能性があります。かかりつけの医師に相談してください。

いつでも元気 2020.2 No.340

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ