いつでも元気

2006年7月1日

26歳以下の解雇自由法 CPEを撤回させた!

立ち上がるフランスの若者たち

不安定雇用に反対!人間らしさ大切にして

美帆シボ
フランス平和自治体協会顧問

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CPE撤回を求める4月4日の全国デモには310万人が参加。10日に政府は撤回を発表した=写真はニース(ロイター・サン)

 昨年の晩秋、アラブ・アフリカ系移民二世の暴動に注目が集まり、フランスの夜空に燃え上がる車の映像が世界を駆け回っていたとき、パリの路上では、「研 修生のデモ」がおこなわれていた。デモ参加者は二〇代の学生である。彼らは「研修」という名の搾取に喘いでいた。

「研修」の名で使い捨て

 フランスの企業の多くは職業経験のある若者を優先的に雇用するため、学生たちは学業中に研修先を探す。研修はほとんどが最低賃金の三分の一以下、または無償の場合も多い。
 研修生がデモをした理由は、一週間に六〇時間も働かされても訴える手段がなく、法的な保護がないからだ。しかも、研修をした企業で雇用される保証はまっ たくない。このような若者たちを使い捨てにする一時雇用の労働契約はフランスだけの問題ではない。
 二〇〇三年、リスボンでのヨーロッパ首脳会議で、アメリカ、インド、中国に対抗して経済的競争力を養うことが優先され、ガス、電気、郵便局、交通機関の民営化促進が決議された。

「解雇の自由」を拡大!?

 この「リスボン戦略」にそってフランス政府が作った法が、二〇〇五年八月に労働組合の反対を押し切って可決された新規雇用契約(CNE)だ。この法は従業員二〇名以下の企業で適用され、二年間は見習い期間として、雇い主は理由を告知せずに解雇することができる。
 同じ法律を、従業員二〇名以上の民間企業と二六歳以下の若者に適用したものが初回雇用契約(CPE)だ。すでに施行されたCNEにより解雇された人々の 労働訴訟が増えるなか、CPEへの懸念が高まった。
 隣国ドイツでもCPEの姉妹法案を準備していたが、フランスの運動の広がりに、労働相はストップをかけている。

可決した法律を運動が覆す

 「今の若者は政治に無関心だ」とフランスでもいわれるが、大学生に高校生も加わって、いったん可決された法を覆すほどの運動を巻き起こす力を発揮した。
 フランスの大学はすべて国立で、授業料は無料だが、今日二〇〇万人を数える学生のうち、一〇万人は最低限の生活費に耐え、八〇万人の学生が生計を立てる ために働いている。その一人、二五歳のキャルラはパリ第二大学ジャーナリスト科の四年生で、デモに参加した。
 「私の大学はとても保守的なんですよ。だからCPEに賛成する学生が多くて、それだけに反対を表明するには努力が必要でした。昨年、CNEが可決された ときはびっくりしたけど、まだ自分に直接関わることだと実感しなかったんです。でも、今度は二六歳以下の若者を対象にCPEが決議されて、とうとうここま で来たか、とハッとしたんです」
 問題の法は破棄されたものの、また次々と同じような試みがなされるのではないか、とキャルラは懸念を抱いている。

自分の未来は自分の手の中に

 今回の運動の中心的な役割を果たしたUNEF(全フランス学生同盟)はこれからも不安定雇用に反対し、自由市場優先のヨーロッパではなく、もっと人間らしさを大切にするヨーロッパ建設を目指して、若者たちの連帯を広げてゆくという。
 「低コスト世代」と呼ばれる若者たちが、この運動によって「自分の未来は自分の手の中にある」と自覚した意義は大きい。

いつでも元気 2006.7 No.177

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