民医連新聞

2003年7月7日

重すぎる3割負担で患者減─特に落ちこむ現役世代─

全日本民医連モニター調査で

 4月に実施されたサラリーマンなどの3割負担によって、受診抑制が起きています。全日本民医連が行ったモニター調査で、特に健保本人の受診手控えが顕著に起きていることが明らかになりました。
 全日本民医連がモニター法人を対象に緊急に行った二〇〇三年四月の「患者実態調査」によると、昨年比のべ患者数・件数ともに大幅な減少となっていること がわかりました。なかでも健保本人の受診数の減少が激しくなっています。
 患者件数は昨年比で、九一・三~一〇六・七%に分布しています(単純平均値九六・一%)。その中で、健保本人の件数は八一・四~九七・六%(単純平均九 〇・三)となり、昨年に比べて約一〇%も減少していました(図1)

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shinbun_1311_02  のべ患者数(受診回数の合計)ではさらに減少が顕著で、全体が八六・〇~九七・五%(単純平均九一・〇%)に分布(昨年を上回ったところはありません)し ているのに対し、健保本人は、七七・八~九九・〇%(単純平均八六・五)で、やはり全体の受診回数に比べ五%近く減少していました。
 保団連の調査では七割以上の会員が一割~三割の「患者減があった」と回答。『フェイズ・スリー』誌も(六月号)事例調査から「軒並み減患減収」と報じました。
 日銀が四月に行った「暮らし向き調査」では、『苦しくなった』と答えた人が五四%以上でした。昨年三月の同じ調査は五一%、一昨年が四八%で、年ごとに 悪化。毎日新聞の調査でも、『三割負担が生活に影響している』と答えた人が七割を超えています(図2)

 

 国民生活の状況が悪化しているところに、三割負担が追い打ちをかけた形です。
 日本能率協会が二〇〇一年に実施した高血圧患者に対する調査では、負担が増えることで「通院回数を減らす」と答えた人は三割以上です。「通院を止める」と答えた人も三%いました(図3)

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 同協会はこの調査から、シミュレーションし、自己負担が現状の倍になると五割もの人が受診回数を減らすとの推計結果をはじき出しています(図4)。経済的な負担が受診抑制を招き、負担の度合いが受診率を左右するとの見方です。
 全日本民医連の調査を担当した永田勝美事務局次長は「一〇月の高齢者一~二割負担に加えて、健保本人などの三割負担が悪影響を及ぼしています。全体の患 者動向と比べて健保本人の減少率が大きく受診抑制傾向は明らかです。三割負担は世界的に見ても最悪であり、国保も含めて患者負担軽減を要求していきたい」 とのべています。

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図の説明:
「医療費がいくら以上になると通院回数を減らすのか」という質問に対して回答された医療費を現在支払っている医療費で割る方法で、患者ごとに倍率を計算 し、倍率の低い方から順に患者数を足し上げ、有効回答数637票で割り指数化した。

日本能率協会総合研究所(2002.4月)
2001年12月の結果をもとに作成

(民医連新聞 第1311号 2003年7月7日)

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