民医連新聞

2020年4月7日

連載 学ぼう 運動方針(1) SDHを生み出す真の原因に迫り公正な視点で ソーシャルワーク機能を高めよう 個人の尊厳と多様性の尊重を 全日本民医連 増田剛会長に聞く

 全日本民医連第44回定期総会で、増田剛新会長が選出されました。今期の課題やとりくみについてインタビューしました。(長野典右記者)

■総会をふり返って

 2月20~22日に熊本市で開催された第44回総会は、新型コロナウイルス感染症対策として、毎朝の検温など従来にない対応を行い、無事に終了することができました。参加者の中から感染者が出なかったことに心からほっとする思いです。今回の総会では新綱領作成からの10年間をふり返り、2020年代の課題を提起しました。

■綱領改定後10年の情勢

 この10年間で日本と世界の情勢は本当に大きく変化したと思います。2010年代に欧州では緊縮政策による諸矛盾が拡大し国民の生活状況が悪化、ギリシャやイタリアなどで経済危機が発生しました。現在イタリアで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が深刻化している背景には、もともと病院の統廃合や医師の海外流出で医療体制が弱体化していたことが原因であるとも言われています。
 こうした中で、資本主義社会のもつ構造的な矛盾に目を向けた動きが広がりをみせています。イギリス労働党のコービン党首やアメリカの民主党のサンダース議員など民主社会主義者を自称する政治家に対する支持が、資本主義大国の特に若者の間で増えている事実があり、日本に住んでいる身としては信じ難い現象です。今回の運動方針案にカール・マルクスの名前があるのを見て驚いた人も多いと思います。
 2015年には国連でSDGsが採択され、全ての加盟国が17の目標に向かって努力することが決まりました。貧困をなくそう、飢餓をゼロに、ジェンダー平等、地球環境を守れ、平和と公正など、さまざまな背景があるにせよ、こうした目標は民医連がとりくんできた課題と一致する内容です。国内では「派遣村」に端を発して、貧困と格差に関するさまざまな研究や運動が広がりました。民医連がキューバに行き始めたのもこのころです。SDHを基軸とする健康戦略や、憲法9条、25条だけでなく、LGBTsに代表される個人の尊厳や多様性の尊重を重視した13条の視点への発展、戦争法反対で本格的に始まった市民と野党の共闘など、「2つの柱」を深化させるような情勢がドラマチックに展開したこの10年でした。

■2020年代の課題

 ではこれからの10年、民医連はどのように歩んで行くのか。運動方針案第1章では4つの課題を提起しましたが、紙面の関係でいくつかについて触れます。
 平和、環境、人権を現場から世界に発信しよう、と提起しました。若いころによく先輩に言われた「Think globally, act locally」の視点がとても大切に思える状況だと感じています。被爆者のみなさんのけん引で発展してきた核兵器廃絶の運動は、被爆75周年にふさわしい飛躍を勝ち取ることが強く求められる情勢です。何としても核兵器禁止条約を発効させたいです。
 また、気候危機を阻止する世界の運動への連帯は、民医連がギアを入れ替えてとりくむべき重点で、Climate justiceという視点に注目しています。先進国がこれまで化石燃料を大量に消費し、それによって発生した温暖化・気候危機の被害は、相対的にインフラが未整備な途上国やこの問題に責任がない将来世代に強くおよぶ、という事実に対して、公正(Justice)を求める運動となって特に若者の間で共感が広がっているのです。加えて、沖縄県辺野古の米軍新基地建設の問題。米中間の緊張が高まる中で、東アジアの平和を守るための戦略的重点課題と捉えるべきであると同時に、「理不尽を許さない」「主権者が決める」を体現する象徴的なたたかいだと感じています。
 社会保障総改悪が進行する中で、患者・住民としっかり結びついて、健康格差を克服する大ムーブメントをつくり出す、というメッセージも発信しました。この間実践を重ねてきた「2つの柱」をさらに深化させて、SDHを重視したヘルスプロモーション活動を本格的に展開する10年にしようという提起です。大切なことは、SDHを生み出す真の原因に迫る視点と行動が必要で、そのためには「公正」の視点に貫かれたソーシャルワーク機能を組織として高めることが重要だと思うのです。全国の現場の実践を通じて深めていただきたいと願っています。

■スローガンの 「タックル」 とは

 2008年にWHOのSDH委員会はファイナルレポートを出し、「権力やお金、リソース(資源)の不公正な分配にタックルする」と表現しました。タックル(Tackle)は「挑む」「とりくむ」という意味だと思います。私見ですが、当時の担当者たちの脳裏にはラグビーやサッカーのそれもあったに違いありません。
 民医連は、権力やお金やリソースを持ち操る、強大な相手に果敢にタックルし続けてきた歴史を持っています。無産者診療所時代の先輩たちにしてみれば、まさにいのちをかけたタックルだったでしょう。しかし、今は8万人の職員と370万を超える共同組織の仲間たちがいっしょです。平和や個人の尊厳を脅かすものに対して、勇気を出してタックルする44期になることを願っています。


第44回総会スローガン

●綱領改定10年のあゆみを確信に、「医療・介護活動の2つの柱」を深化させ、医師確保と経営改善で必ず前進を
●共同組織とともに地域の福祉力を育み、人権としての社保運動を旺盛にすすめ、健康格差にタックルしよう
●共同の力で、安倍政権による9条改憲ストップ! 核兵器廃絶、地球環境保全運動の飛躍を

(民医連新聞 第1713号 2020年4月6日)

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