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2020年4月7日

【声明2020.04.03】水俣病被害者互助会控訴審不当判決に対する声明

2020年4月3日
全日本民主医療機関連合会 会長 増田 剛

 水俣病の未認定患者でつくる水俣病被害者互助会の控訴審判決が3月13日、福岡高裁であった。原告は8人で、いずれも1953年~1960年に生まれた、いわゆる胎児性水俣病被害者と同世代の被害者。
 2014年の1審・熊本地裁は、主に同居家族に水俣病の行政認定患者がいるかどうかで原告を線引きし3人を水俣病と認め国・熊本県、チッソなどに賠償を命じた。しかし、控訴審では一転、原告全員を水俣病と認めなかった。
 水俣病を巡っては、国が1977年に感覚障害や運動失調など複数の症状を持つ者を認定患者とするという厳しい判断基準を示した。患者と認められなかった多くの人が司法の場に救いを求め裁判でたたかった。司法は、国の判断基準よりも幅広く被害を認めてきたという経緯がある。
 ノーモア・ミナマタ1次訴訟の引き金ともなった2004年の関西訴訟最高裁判決は、感覚障害だけでも水俣病と認めた。司法は、柔軟に水俣病と認める姿勢を示し、国の厳格な基準に疑問を投げかけた。
 今回の控訴審判決は、1審で水俣病と認められた原告団長他1名についてメチル水銀暴露を認めながらも手足の感覚障害を腰椎椎間板症など他疾患による可能性があるとし、1審で棄却された5人について「高濃度の暴露を認めるのは困難」であり自覚症状は他疾患による可能性があると水俣病として認めなかった。
 原告・弁護団は「歴史に残る不当判決」と評している。マスコミは「時計の針戻す判決」(3/14朝日)、「司法後退、国基準を追認」(熊日)、「行政追認強まる」(南日本)などの見出しを付けて大きく報道したばかりでなく、「救済漏れ黙認する判決だ」(熊日)と社説でも厳しく批判している。
 福岡高裁は、国(環境省)の通知を追認し、より厳しい判断を追加しているばかりでなく認定基準すら明確にしていない。判決文通りに対応すれば、過去の認定患者も水俣病ではなくなってしまう。このような不当な判決は絶対に看過できない。
 私たちは「すべての水俣病被害者の救済」をめざして引き続き奮闘する決意である。

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