MIN-IRENトピックス

2020年5月26日

医療と介護を守る! 全国に緊急事態宣言

 新型コロナウイルス対策の特別措置法にもとづく緊急事態宣言について、政府は4月16日の対策本部で、5月6日までの期間、対象地域を全国に拡大することを決めました。全国で感染者数は日増しに増え、民医連の事業所でも感染患者を受け入れるなど、最前線での奮闘が続いています。4月17日にオンラインで行われた全日本民医連理事会議での発言を中心に各地のとりくみを紹介します。

感染防止留意の行動よびかけ
メンタルサポートも

北海道民医連

 政府が緊急事態宣言を出した4月7日の翌日、北海道民医連感染対策本部の小市健一本部長(道民医連会長)は「新型コロナウイルス感染症から、地域の患者さんと私たち自身を守るため、職員のみなさんに呼びかけます」と題する文書を出しました。
 北海道勤医協は、3月19日に法人の新型コロナウイルス感染症対策方針を出し、感染症拡大も想定した事業継続計画をすすめるためにチェックリストを作成。各事業所で点検をすすめてきました。看護学校の授業開始の延期、学生実習受け入れの中止・延期、休校に伴い職員の子どもを受け入れる臨時学童保育園を設置しました。田村裕昭理事長は全職員に向け「感染防止に留意した行動の呼びかけ」を出しました。
 道内の医療機関のうち、道外の非常勤医師の協力を得て診療や当直を維持しているところでは、勤務のキャンセルが相次いでいます。東京や関西圏在住の医師、アメリカからの隔月支援の医師が飛行機の減便で医療機関に来ることができないためです。新たに医師を探すには紹介料がかさみ、常勤医の負担を増やすか、診療を縮小するしかない、という状況です。
 道民医連が医療機関に行った聞き取りでは、通院患者の2割減、訪問診療休止もあり、健診のキャンセルで健診者数は9割減という事業所も。電話再診や長期処方による減収、通所介護では利用者の5割減など経営が危ぶまれます。
 道民医連は、政府と北海道に対して、医療機関、介護・福祉施設への衛生材料の確保と財政支援を要請。社保協などと共同して北海道や札幌市に対し生活困窮者対策と、国民健康保険加入者に対する保険料減免や傷病手当金などに関する要望書を提出しました。
 地域社保協と雇用・くらし・SOSネットワーク北海道は、感染対策をした上でSOS相談会や電話相談会などを開催。民医連のSWなど職員も参加しました。生活保護の申請や休業給付金、国保の傷病手当などの相談がありました。
 新型コロナウイルス感染症の対応が長期戦となり、現場の職員が疲弊してきています。メンタルサポートなどを整備していきます。(須田倫子、北海道勤医協・看護師)

診療再開
入院患者から陽性反応
開業医から外来支援も

尼崎医療生協病院

 兵庫・尼崎医療生協病院で、4月10日に緩和ケア病棟の患者のPCR検査を実施し、午後4時頃に陽性。8時に保健所職員が到着、検査に至った経過を報告し、濃厚接触者の特定作業に入りました。
 患者の発熱に前後して職員2人の発熱などがありました。濃厚接触者は医師3人ら計25人で、全員のPCR検査を実施し、2週間の自宅待機を指示。緩和ケア病棟医療を維持・継続するためにマンパワーを病棟に集中することとし、新規入院、救急、外来診療を休止しました。
 保健所のアドバイスもあり、翌日に記者会見を開催。その前に職員と組合員に情報を伝えました。会見が終わると問い合わせの電話が殺到。特に週が明けての月曜日は電話が通常の2倍となりました。さらに、自宅待機者でない職員から、子どもが保育園や学童への登園を断られたとの報告が3例ほど入り、病院から当該施設に電話して説明するとともに近隣の市長宛てに風評被害で断らないよう緊急要望書を届けました。法人内の診療所でも予約の取り消し、職員の自転車に「コロナ」という張り紙がされたなどの被害がありました。風評被害は、踏ん張ってがんばる職員への二次被害とも言え、医療・介護崩壊につながります。
 一方で、記者会見後、地域の開業医から「外来の患者はこちらに紹介してもらって構わない」「マスク、ガウンを届けます」などの連絡が入りました。全日本民医連の増田剛会長の激励メッセージ、全国の民医連から応援の寄せ書などが寄せられ、励ましになりました。
 4月21日、自宅待機者の復帰にむけたPCR検査を行い、全員陰性。23日から通常診療を再開し、同時に発熱外来も始めました。
 全国からの応援、ありがとうございました。(向井章雄・事務)

知恵を出し合いできることを
コロナ病棟開設 なんでも電話相談も

4月17日の理事会議で行われた各地からの報告を紹介します。

地域の安心となる

大阪

 大阪府内のA病院はB市の地域医療支援病院ですが、感染症指定医療機関ではありません。
 2月17日に保健所から、「帰国者・接触者外来」とCOVID―19擬似症患者の入院受け入れの申し入れがありました。翌18日に法人の対策本部を立ち上げ、法人全体で「高リスク者を守る」「各事業所が必要とされる機能を果たす」「事業を継続する」の3つの基本方針を掲げ、病院を中心に診療所や介護事業所の対応方針を決定。「断らないCOVID―19」を実践しています。地域の急性期病院の中でPCR検査依頼患者の受け入れ数は3月末までの集約で当院が断トツで、他院の2倍以上でした。
 当院と法人のBCPを大阪北部地震や台風の際に発動した経験があり、事業継続の優先順位、職員の安否確認システムなどを応用して対策本部を開始できました。
 病院ERでは通常の救急医療を継続しながらCOVID―19に対応しています。夜間・休日はER日当直医が最初のCOVID―19対応。ERの外にテントを張り、軽症患者のPCR検査をしています。
 同法人の診療所ではCOVID―19の一次トリアージ機能を維持し、発熱・呼吸器症状患者を診療。「発熱と咳というだけで、他の医療機関で診てもらえなかった」という患者が多く、診療所での受け入れは地域の安心となっています。

* * *

 法人の3月度の決算では収益が予算よりも約5900万円不足。2020年度の収益予測は通常計画よりも17億円の下振れです。COVID―19の診療は通常よりマンパワーと時間が必要で、通常業務を休止したり病床を空けたりしています。疑似症で入院しても肺炎のDPC日当円は低く、濃厚接触職員が出たら自宅待機にする必要があります。COVID―19診療をやればやるほど病院経営は困難となり、倒産の危機に直面する。こんなことがあってはなりません。医療界全体で「医療機関をつぶすな」の運動を展開する必要があります。
 職員の不安にこたえ、心の健康を保つ活動にとりくみ、職員の健康と安全を守りたいと思います。(田端志郎、医師)

受療権生活を守る

千葉

 千葉県内のC病院では、D市保健所の要請を受け、4月上旬から1病棟を20床にしてコロナ病棟として運用を開始しました。中旬から軽症者が入院、ゾーニングや出入口の工夫など急な工事も必要となり、費用の保障や減収の補償などについてD市を通じて要望を出しています。千葉市では1床あたり1日8万円の補償を発表しています。コロナ病棟の体制は担当医師1人、看護師13人+師長、介護福祉士1人。危険手当も支給することとしました。
 患者の動線を分けて発熱外来も開始。電話問診の専任者を配置し、時間指定で来院してもらっています。電話再診は1日50~60件。電話3台で対応し、県連事務局員も応援に入り、クロノロなどを行っています。
 保育所・学童クラブが登園自粛となり、特別保育を拡充しました。職員を対象に精神科医師を講師に学習会を行い、90人以上が参加。メンタルサポートチームも発足させました。
 行政への要望は以下の通りです。病院の減収に対する補償、家族に感染を広げないために宿泊を希望するスタッフの宿泊場所や食事の提供、医療従事者の子どもの預け先の確保と特別保育への補助、介護サービスの利用を断られる事態が発生しているため、介護が必要な人を見逃さない対策、新型コロナで職や住まいを失った人の受療権と生活を守ることなどです。(加藤久美、事務)

「売上は月6000円」
鳴りやまぬ電話相談

群馬民医連

 4月18~19日、全国でとりくまれた「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも相談会」に、群馬から当県連と法律家らで参加しました。用意した電話回線は1回線で、鳴り続ける電話を受け続けましたが、2日間で受けた相談は77件。ダイヤルデータでは、群馬の回線にかかった電話は7000件以上で、相談にたどり着いたのはわずか1%でした。
 ネットカフェを追われた人や車上生活者などからの相談があり、生活保護の申請にも同行しました。コロナ不況により売り上げが1カ月6000円となったカラオケスナック経営者など自営業者には、無利子のつなぎ融資や緊急小口資金、持続化給付金などを案内しています。
 職場が休業し子どもに仕送りができないシングルマザーの相談、突然解雇されて解雇予告手当を受け取っていない派遣労働者などの相談も多くありました。そこで、当県連で引き続き生活相談ダイヤルを開設し、各種制度の手続きや申請窓口への同行もしています。
 地元紙は生活に困った場合の相談先として群馬民医連事務局を掲載。継続してコロナにかかわる相談の常設ダイヤルとして機能できるよう、事務局内研修をすすめています。(町田茂、県連事務局)

(民医連新聞 第1714号 2020年5月4日)

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