医療・看護

2020年7月21日

相談室日誌 連載480 無低診があったから医療や生活支援とつながれた(長野)

 今年の冬、役場保健師から「お金が無くて受診できない。食料はフードバンクからの寄付でつないでいるが、体調不良が続いている。何とか医療につなげたい!」と相談がありました。まずは受診するよう伝え、保健師の付き添いでAさん(70代男性)は当院を受診しました。
 十数年前に他県から移住し、身寄りもなく、ひとり暮らしのAさん。公務員として勤めた時期もありましたが、移住後は不安定な雇用形態となり、老齢年金と臨時的な就労収入での生活でした。貯蓄は底を尽き、景気の悪化も相まって税金を滞納するように。昨年夏からは年金の差し押さえが始まりました。
 秋頃からは体調不良で仕事に行けず、さらに生活は困窮。年金額が保護基準を上回るため、生活保護は利用できません。体調不良については近医を受診していましたが、医療費が払えず中断していました。当院の無料低額診療事業を申請し、定期通院・検査する中で診断された病名はALSでした。
 難病医療費助成を申請し、治療のための入院と在宅生活を組み合わせていくことになりました。病状は進行し、移乗をはじめ日常生活に介護が必要でした。SWは、生活環境の整備、社会保障制度の活用、介護サービスの利用について、Aさんや関係機関と話し合い、自宅退院に向けての準備をすすめました。
 自宅の中に1メートル以上積み上がったゴミは関係者で片付け、冷蔵庫や電子レンジなど生活に必要な物品は院内で募集もしました。経済状況や生活状況などを明らかにすることは、Aさんにとってかなり抵抗があったと思いますが、サービスを調整し、最初の在宅生活から病院に戻ったAさんは、「大満足の在宅生活でした」と話していました。
 Aさんひとりではあらがえない状況でしたが、無料低額診療事業があったからこそ医療や在宅生活の支援者につながり、ネットワークを形成できました。頼れる身寄りのない人が難病を抱えながら生活していく上で、今後もさまざまな課題が出てくると思います。これからも本人に寄り添った支援を続けていければと考えます。

(民医連新聞 第1718号 2020年7月20日)

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