民医連新聞

2020年7月21日

「明日の食事、どうしよう…」 いのちをつなぐフードパントリー 埼玉老人保健施設みぬま

 新型コロナウイルス感染症は、より困難な人びとに大きな影響を与えています。広範な現役世代への打撃の実態も見えてきました。6月28日、埼玉・老人保健施設「みぬま」の食材無料提供のとりくみ、フードパントリーで取材しました。(丸山いぶき記者)

 フードドライブとは、食べきれずに余った食材を、「フードロス」(食品廃棄)せずに、必要とされるところに届くようにすることです。フードパントリーは、そのための地域拠点です。

■母として苦渋の選択

 20代のシングルマザーのAさんは、5月ごろから「みぬま」のフードドライブを利用しています。「最初は遠慮して、ほんのちょっとしかもらわなかった」と話すAさんは、とても痩せていました。
 4月、コロナ禍に別の事情も重なり収入が途絶えました。家賃と駐車場代だけで6万6000円かかるところ、収入は児童扶養手当の4万8000円だけ。10万円の特別定額給付金や子育て世帯への臨時特別給付金は、まだ届きません。「いちばん厳しかった時は、ふりかけごはんだけでした」。
 現在は子どもたちを保育園に預け、週6日、早朝からフルタイムで働いています。「延長保育料が痛い。保育士さんに叱られ、子どもの急な発熱で職場にも嫌がられる。日曜しか相手できないから、長男は家では笑わない」とAさん。ストレスで母乳も止まりました。自身の父親の暴力や金の無心から逃れてきているため、頼れる家族や友人もいないといいます。
 普段は買ってもらえないお菓子を手に、ボランティアとうれしそうに遊ぶ子どもたち。Aさんは、食材の無料提供を受けざるを得ない苦しい胸の内も明かしました。「ひとりなら利用しない。でも、子どもたちに食べさせるために使うしかない。20歳まで責任持って育てあげたいし、人目も気になるけど。毎日、明日はどうしよう?と思いながら生活しています」。

■広範な世帯に影響が

 ともに30歳のBさん夫婦には、0歳から10歳まで、5人の子どもがいます。新型コロナの影響で仕事が減り、夫の月収は3分の2になりました。「それまでもギリギリの生活だったから厳しい。本当に助かる」と夫。妻の実家も厳しい生活に陥っていました。父は脳出血で倒れて以来働けず、母も現在入院中。同居する妹は、新型コロナの影響で派遣社員切りにあいました。妻は実家や困っている友人にも「みぬま」のフードドライブを紹介しているといいます。
 「収入要件はあえて設けず、困っていたら誰でも利用して、と呼びかけています」と話すのは、老健「みぬま」の高橋恵子管理看護長。新型コロナの影響は、普通に生活できていた人にもおよび、子どもも巻き込まれていることを、相談事例から実感しているといいます。仕事を失い、4月に生まれた乳児を抱え、夫婦で1日にカップラーメン2個で生活していた外国人の事例もありました。

■いのちつなぐ窓口のひとつに

 医療生協さいたまでは、「新型コロナウイルスに負けるな!」プロジェクトとして、フードドライブのとりくみを強化しています。昨年7月に始めた「みぬま」のフードドライブのべ利用件数は、毎月おおむね一桁でした。しかし、5月は32件に急増。6月は取材したフードパントリーでの36件を含め75件でした。一方、とりくみはこれまでにない広がりも見せています。ボランティア団体や大学、企業、行政も巻き込んだ地域のネットワークができつつあります。
 「明日の食事という生きる根本が崩れてしまっている事態。ひとりで悩まずに気軽に利用してほしい。そこから無料低額診療事業や社会保障制度、生活保護などにも、しっかりつないでいきたい」と高橋さん。

(民医連新聞 第1718号 2020年7月20日)

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