民医連新聞

2020年8月4日

相談室日誌 連載481 「生活と人権を守る」中核として重い荷物背負うAさんを支援(東京)

 Aさんとのおつきあいは、かれこれ5年になります。若い頃の大切な1枚の写真を見せてもらったことがあります。同僚といっしょにとびきりの笑顔で写っているAさんが印象的でした。
 30年前、同居の父が他界してからひとり暮らし。その頃から近隣市を十数回転々と住み替えてきました。今は木造のアパート6畳一間に台所、物は少ないのですが小物を素敵に飾っています。ですが、この部屋にいると「自分に向けられた金属音が常に聞こえ、ある集団から嫌がらせを受けている」と言います。「転居しても金属音や小動物を部屋に放り込まれるなど嫌がらせが続く、世の中を改革しない限り解決しない」と常に不安とともに暮らしています。新型コロナの影響で、過ごせる公共施設も使えず、外出も自粛、本人の訴えはより強くなり警察にSOSを出したり、近隣住民を巻き込む状況も発生しました。
 貯蓄を切り崩しながらの生活で経済的に心配、身寄りがいても頼れない、自分の健康も年々変化していく…。75歳を超え、将来の不安の強さは増していきます。私たちがAさんにできることは傾聴すること。保健所と連携して緩やかに医療につなげられたら、Aさんの気持ちも少し楽になるかもしれない。このような場合は、医療につながったからといって解決するものではないと言われています。30年来背負い続けている重い荷物を少しでも軽くできるよう、理解者・支援者を増やし、不安を少しでも軽くできるよう心を寄せることが私たちの仕事なのだと感じます。
 介護保険につなげることや、在宅生活を整えるための支援、そのほかの多種多様な相談支援、Aさんのように、体は元気でも支援の必要な人をささえることも、私たち地域包括支援センターの大事な仕事です。
 全国に民医連の地域包括支援センターは80カ所以上となっています。第44回総会運動方針では「生活と人権を守るまちづくりの中核」としての活動が提起されました。自治体からは次々と事業が委託され、業務が増えることはあっても減ることはなく、時にはため息も出ます。ですが、地域の利用者の立場に立った支援者であり続けたいと思います。

(民医連新聞 第1719号 2020年8月3日)

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