MIN-IRENトピックス

2020年8月18日

コロナでなにが (2)メンタルサポート 組織一丸となって職員の心の健康を守る

 新型コロナウイルス感染症は、人びとのくらしと健康へ大きな影響をおよぼしています。その影響と背景、解決の道筋を考えます。2回目は大阪・同仁会が職員に行った、職員のメンタルヘルスを守るとりくみについて。産業保健師の酒井見名子さんに聞きました。

 新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、同仁会の耳原総合病院は2月にBCP(事業継続計画)会議を立ち上げた後、法人全体としても4月にBCP会議を立ち上げました。コロナ禍で職員の心理的影響が強くなる中、まずは医療・介護の最先端で働く職員の健康を守ろうと、“COVID-19健康サポートチーム”ができました。
 週1回のBCP会議の内容から、職員の健康を守るとりくみを検討し、まず職場長あてに「組織一丸となって職員のメンタルヘルスを守ろう」とメッセージを発信。そして、職員自身が心の状態に気づき、早めに対処することで心の健康につなげようと「心の健康度チェック」を実施しました。
 毎年7月にストレスチェックをしていましたが、新型コロナで煩雑な業務の中、ストレス指数も高くなるため早急に介入したいと、5月11~23日の約2週間でアンケートを行いました。「うつ対策推進方策マニュアル―保健医療従事者のために―2004年1月厚生労働省地域におけるうつ対策検討会」を参考に、8問の質問を用意(表1)。抑うつ症状の状態をスクリーニングし、早期介入を主な目的としました。

■約3割がコロナと関連

 調査は非常勤を含む全職員を対象とし、回答者数は947人、回答率は52%でした。判断方法は、問1~5をA項目、問6~7をB項目、問8をC項目と分け、陰性の場合は、問1、2、4が「はい」、問3、5、6、7が「いいえ」です。陽性がA項目に2つ以上、B項目に1つ以上の対象者を要注意者とし、C項目は自由記載の内容によって要注意者を判断しました(表2)。
 A項目が2つ以上の回答者は約7割と多く、看護師、管理栄養士、保育士、トレーナー、リハビリ技師助手の8割以上が要注意者でした。B項目では、要注意者は約1割と少ない結果でしたが、C項目の要注意者は約3割でした。
 自由記載欄は、約16%の記載がありました。そのうち、コロナと関連すると思われる記載が34・2%でした。
 事業所別、職種別に分析すると病院に要注意者が多く、次にクリニック、介護事業所の順になりました。職種では看護師がもっとも多く、事務職は事業所に限らず約7割が要注意者でした。

■迅速な介入と情報共有

 調査の結果を法人BCP会議やサポートチームで話し合い、集団や個人でのアプローチを検討しました。問7(気持ちの落ち込みや死について考えている)で「はい」と答えた23人をハイリスク者として、先行介入することにしました。対象者に保健師の面談を受けてもらうよう、手紙を郵送。返信があった人と保健師が面談し、継続支援をしています。返信のない人にも再度手紙を出し、この調査を機に15人とかかわることができました。
 職場別では、要注意者が8割を超える職場をハイリスク職場とし、職場長へのカウンセリングを実施。職場別では、要注意者率が高い看護師、事務職の職責者へのカウンセリングも実施し、職員のメンタルサポートを行いました。

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 サポートチームは理事長アピールの「組織一丸となって支援します」の言葉から、職員の心の健康を守るとりくみをすすめています。現在はカウンセリングや、保健師の相談が受けられることを院内の掲示板やポスターで情報共有しています。そして、全日本民医連が発信した「セルフケアのための10のヒント」も、目につきやすいようデザインを加えて、各事業所に掲示しています。
 「こころの健康度チェック」で職員の声を集め、必要とされる支援に結びつけることができました。日々変化する環境に淘汰(とうた)されることなく、地域の医療を守るために、職員のメンタルヘルスを守るとりくみをひきつづき行っていきます。(代田夏未記者)

(民医連新聞 第1720号 2020年8月17日)

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