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2020年9月8日

連載 学ぼう 運動方針④ 山田秀樹副会長に聞く 医師の確保・養成 医師集団づくりで前進を 運動方針に立ち返り目標達成にこだわろう

 学ぼう運動方針―。4回目は医師、医学生分野です。44期の課題について、全日本民医連の山田秀樹副会長(医師部長)に聞きました。(丸山いぶき記者)

●地協を軸に必ず「200―500」達成を

 医師分野で今期いちばんの課題は、2021年卒業の200人の新卒医師受け入れと、500人の奨学生集団の維持を全国でめざす「200―500」の目標を達成することです。全日本民医連の44期運動方針は、経営改善での前進をめざすこと、その鍵となるのが医師の確保と養成、医師集団づくりであることを呼びかけました。
 いま、医学生は大きな困難に直面しています。全日本民医連医師部でも学生の困難を把握し、その中で私たちができることは何か、学生の要求に向き合うために「新型コロナウイルスに関する医学生の実態調査」を行いました(図、別項を参照)。これをもとに学生と対話をしています。
 500の目標は、創意工夫し維持しています。一方、200の目標はやや後退しています。43期は数値目標にこだわり、戦略を考え達成してきました。今期も、なんとしても目標を達成する気構えで臨みましょう。
 第1回評議員会での香川・原田真吾医師の報告は重要です。中国・四国地協はこの間、地協で奨学生を増やし、研修医を育て、トランディショナルイヤー研修を打ち出し、新専門医制度下でも後期研修につなげる努力を行っています。新たに提起したもうひとつの目標、後期研修医100人の受け入れに向けても、地協を軸に着実に前進していくことが重要です。

別項 医学生の実態調査より学生の声

●授業・講義で困っていることは?
オンライン授業といってもPDF資料が公開されるだけ/通信環境を自分で整備しろと言われた/自分の理解度や進度がわからない
●実習で具体的に困っていることは?
診療科で対応が全く異なる/将来医師になったときが心配/臨床実習ができない
●コロナ関連で不快な感情を抱いた事例は?
「若者は外出するな」と言われた/顔見知りの地域の人から、「コロナ患者が運ばれた大学病院の医学生だろ、近づくな」と言われた
●5、6年生へ、実習や講義が中止になったことで卒試判定にどんな影響がありますか?
わからないからとても不安
●自身の生活環境で困っていることは?
アルバイト禁止と収入の減少/眼精疲労や肩こり/言いようのない不安や焦り
●大学や政府・自治体に要望したいことは?
学生の意見を集める姿勢がほしい/非常時にも市民の健康やいのちが守られる社会

●直面するコロナ禍から医師集団づくりへ

 医師集団づくりでは、全世界が直面するコロナ禍という具体的な医療課題を前に、議論を深めるチャンスです。43期に「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」(以下、大切文書)を出しました。この大切文書で強調したのは、医師ひとりひとりの多面性、多様性を尊重しながら、それを力に共通項を見いだし、議論し、持続して成長できる医師集団を形成することです。
 東京・立川相互病院では現在、通常診療と並行して、医師がローテーションを組んで、新型コロナ外来・入院診療をしています。日々の医療実践をどう役割分担していくのか、医師ひとりひとりの状況に鑑みながら、医局で議論を行い、大切文書がめざす医師集団づくりをめざしています。コロナ診療をしていなくても、例えば大阪・東大阪生協病院では院長を先頭に発熱外来を積極的に担い「まず診る」「援助する」「何とかする」視点で、地域でかけがえのない存在となっています。
 冬には確実に第三波がきます。すべての事業所が、地域から求められている役割を議論すべき時です。
 コロナ禍は、貧困と格差がいのちの問題につながっていることを浮き彫りにしました。医局でも医学的な視点だけでなく、患者の生活背景、経済的な困難、情報格差の存在など、SDHの視点での話し合いを通じ、自分たちの役割を明らかにし、医局宣言や医師政策の議論へ発展させましょう。
 その上でアドボカシー、アウトリーチ、SDH研究などの実践を広げていきましょう。全日本民医連の青年医師のSDHに関する学術研究助成制度は、今年度4件の助成を決定しました。ぜひ、来年度も積極的に活用してください。

●創意工夫で諸課題に挑もう

 この間、民医連の初期研修病院が予想外の認定取り消し、定数削減にあっています。突然の通達、おおよそ理由にもならない理不尽な理由によるものです。定員削減という厚労省のロードマップの中、中小病院が主体の民医連は苦戦を強いられており、たたかっていかなければなりません。
 医師の働き方改革、多チャンネルの医師確保も忘れてはならない課題です。2021年は新専門医制度の研修修了者が生まれる年です。民医連外に送り出した専攻医の帰任や、外部からの新たな常勤医師確保をめざしましょう。
 コロナ禍で鮮明になったことは新自由主義による社会の脆弱(ぜいじゃく)性です。医療崩壊の危機や、医師・看護師不足が、国民の目にも明らかになりました。「医療機関を守れ」の声や、国民本位の公正な医療の実現に向けた幅広い共同をめざしていきましょう。
 新興感染症の頻発の背景には、自然環境破壊もあるとされています。44回総会が示した地球環境保全も身近な課題になりました。常に、総会運動方針に立ち返ることが大切です。
 全国集会ができない状況ですが、地協を軸にWEB集会も旺盛に展開しましょう。コロナ禍を理由に運動が緩んでしまっては本末転倒です。医師分野でも創意工夫で前進させましょう。


いま、やれることをやろう

WEBを活用した医学生対策

 新型コロナウイルス感染症の影響で、例年通りの活動ができない中、各地の医学生対策ではWEBを活用し奮闘しています。

次につなぐ関係づくり

東京民医連

 【東京発】6月6日、コロナ禍で開催できなかった奨学生ミーティングをWEB開催しました。WEBでは初開催の今回、当県連の奨学生57人のうち42人が参加。地方大学に通う学生も参加し、近年でもっとも多い参加者数でした。
 講演では立川相互病院の中島拓也医師(県連医学生委員長)が、同院での新型コロナ対応、厳しい経営実態、スタッフが置かれている現状、自身の考えを語りました。オンラインシステムの機能を使いグループ討論。学生からは「社会のニーズに応える意識が院内で一致したことも、チーム医療の成せる業」「政治のあり方で社会は変わる。声をあげていきたい」などの感想がありました。
 コロナ禍のマイナスをどうプラスに変えるか、模索が続いています。担当大学の東京大学が4月早々にWEB授業を開始し、協力している東大医療ゼミナールでもZOOMを使っています。とにかく当県連もやってみようと始まったWEB企画。事業所でもWEBで新しく奨学生ミーティングを始めています。WEBなら、地協を中心に奨学生の交流もできます。将来、民医連の研修医としていっしょに働く仲間となる奨学生集団を構築できればと考えています。
 一方、直接対面で表情をうかがえないため、関係性を構築しづらいというデメリットも。いかに「コロナ禍が明けたらこの人に会いたい」と思ってもらえるかが重要です。国会要請行動などの現場を見せられる地理的利点も生かし、次につながる関係づくりを続けていきます。(永山順一、事務)

医学対の2つの任務

千葉民医連

 【千葉発】7月4日、当県連の医系学生向け新歓企画として、国際NGO団体ペシャワール会室長の藤田千代子さんを招き、講演会を行いました。コロナ禍で初のWEB開催。医学生をはじめ他学部生、高校生・受験生など学生51人と、職員15人の計66人が参加。SNSで発信すると、遠くは沖縄など全国から参加者があり、これまでにない広がりをみせました。
 藤田さんは、長年アフガニスタンの人びとのために尽力してきた故中村哲医師の右腕だった看護師。貧富の差や差別、温暖化による干ばつなどのアフガニスタンの現状と、「地域の人びとが何を求めているのか」を常に考え、必要な行動をしてきた中村さんのエピソードを語りました(写真上)。参加者からは「医療行為に縛られず人びとの幸福のために働くのは理想の医師像」などの声が。グループで感想交流と討論も行い、学生同士で考えを深めました。
 今回、コロナ禍で中止も覚悟していた企画を、地協や全国のとりくみに学び急きょWEB開催しました。学生の学びたい要求とその場がない現状も浮き彫りになりました。ただこれは、これまでの活動の代替策にすぎません。個々の学生と学びを深めることや、つながりを増やし強めることには課題が残っています。医学対の本質は2つの任務()であり、民医連を伝え学生とともに育ち合うことです。その点を外さず、やれることを積み重ねていく必要があると感じています。(秋元司、事務)

多彩なとりくみを展開

滋賀民医連医学生センター

 【滋賀発】6月11日、東京・大泉生協病院院長の齋藤文洋医師を講師に、「COVID―19と対峙する民医連病院~経営困難が迫る病院経営についても考える~」と題した医学生向けWEB学習会を開催し、医学生15人が参加しました。医学生からは「現場の医師としての立場、経営者・管理者としての立場の両面から経験と実感の伴った話を聞けてよかった。コロナで働くほど損していく構造は早急にあらためられなければならない」などの感想がありました。
 この間の医学対活動は、新歓期の入試宣伝から苦戦続きです。毎月1回企画していた、夕食会を兼ねた学習会も、コロナ禍で中止。5月に県連でオンラインシステムのアカウント契約をしたことを機に、月1回の学習会をWEBに置き換え再開しました。他県からの参加希望にも応え、垣根なく参加者を広げ、全国集会でしか聞けないような講師も招けるのはWEBならでは。訪問診療の3D動画などを動画配信サイトで限定公開する、高校生向けVR医師体験も準備しています。ただ、当県連では制限をかけながらも一部実習を受け入れており、やはり実地実習の方が人気は高く、まだ実績はありません。
 課題は、WEBでは時間や方法が限られコミュニケーションが十分にとれないことです。学生同士の横のつながりには雑談が大事です。学生主体の運動への組織化も課題です。(小西祐治、事務)


※医学対の2つの任務
(1)医学生のさまざまな自主的活動を援助して、医学生の民主的な成長と運動の発展を促す
(2)民医連運動の後継者を確保する

(民医連新聞 第1721号 2020年9月7日)

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